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朝倉未来はヴガール・ケラモフのタックルを封じきれなかった(写真・RIZIN FF)
朝倉未来はヴガール・ケラモフのタックルを封じきれなかった(写真・RIZIN FF)

わずか2分41秒の惨劇…なぜ朝倉未来はRIZINタイトル戦でケラモフの必殺チョークにタップしたのか…引退説が流れるも公式SNSで「多分まだ頑張る」と再起を示唆

 総合格闘技イベントの「超RIZIN.2」が30日、さいたまスーパーアリーナで2万4千人を超える大観衆を集めて開催され、メインのRIZINフェザー級王座決定戦では、人気ユーチューバー格闘家の朝倉未来(31、トライフォース赤坂)が、ヴガール・ケラモフ(31、アゼルバイジャン)にリアネイキット・チョークを決められ、1ラウンド2分41秒で一本負けを喫して初の戴冠機会を逃した。2021年6月に前王者クレベル・コイケ(33、ボンサイ)に三角締めで落とされて以来、2年ぶりの黒星。日本人相手には“無敵”だが、強豪の外国人には通用しないという“内弁慶”ぶりを露呈した。会見で多くを語らず、ファンは引退を危惧したが、自身のインスタグラムで「多分まだ頑張ります」と再起を示唆した。

 「マウントのキープ力は今までやった選手と比べものにならないくらいに強かった」

 

 何もできなかった。
 1ラウンド。互いに距離とタイミングを伺い、朝倉は一発も打撃を放てない。1分40秒を過ぎたところで、ケラモフがフェイントを入れてから、その右足をつかみシングルレッグタックルを仕掛けた。テイクダウンを許さないことで知られる朝倉が耐える。ケラモフは、片足で踏ん張るその左足を払いにいったが、まだ倒せない。すると右のパンチを叩きこみながら、ロープに押し込み、ついにテイクダウンに成功した。
「作戦としては、打撃戦より、グランドでいったほうがいいんじゃないか、とのアドバイスを受けた。それにしたがってやったんだ」
 陣営は、ケラモフに寝技勝負を言い聞かせていたという。
 ケラモフは、パワーにものを言わせて、マウントポジションをとると、右の拳を振り下ろすのではなく、朝倉の側頭部にフックのように打ち込み注意をそらした。そこから右ヒジを何発も顔面に落とす。未来ファンの悲痛な声が“聖地”さいたまスーパーアリーナを包んだ。
 苦しい展開となった朝倉が、体を反転させてロープ際で膝を立てて、エスケープに動くと、ケラモフは、パウンドに固執することなく、右足だけをロックした中途半端な横向きの態勢から、クビに腕を巻きつけてチョークで締めにいった。
 朝倉にも計算があった。
「背中がロープについていて、あの態勢から決まることは普通はない。足も入っていなかった。立つ準備をしていたが…なんか、だんだん締まっていって…そこが想定外」
 セオリーを覆す自信がケラモフにあった。
「不安はなかった。あの状態でも朝倉をコントロールしていた。あのチャンスを逃したらダメ。やりきる自信はあった。確かに左足ではロックしていなかったが、万が一立ち上がっても、その後をコントロールして勝てる自信があった」
 アゼルバイジャン人がクビに入れた腕の角度を変え力を入れると、みるみる朝倉の顔が真っ赤に変色していく。たまらず右手でポンポンと、その手を叩き屈辱のタップ。 
 わずか2分41秒の惨劇だった。
 2021年6月のクレベル・コイケ戦以来となる黒星。その際には、タップを拒否して、衝撃の「失神KO」となったが、この日は、自ら負けを認めた。
「別にタップしないっていうのもできる。タップせずに落ちることなんてたやすいこと。ただ前回タップしないことに『良くないこと』という風潮があって格闘技業界的にも、そういうことなのかなと。どうあがいても落ちるしか道はなかったのでタップした」
 命が危険にさらされる前回の行為に対しては論争が起きた。「本当の侍」と勇気を称える声があった一方で、現場の中からは、ルールにもとづいた競技としては、あるまじき姿との意見が多く出ていた。その2年前の論争が、朝倉の心のどこかにトラウマとして、ひっかかっていたのだろう。
 勝者のケラモフは「すべてが計算通りにいった」と雄叫びをあげ、真っ青な顔になった敗者は、コーナーに手をかけ、ずっと下を向いていた。
 インタビュールームに現れた朝倉は、ユーチューブに出演している姿とは、まるで別人のように言葉が少なかった。
「とくに何もない。言葉がない…強かったですね」
 その言葉の真意を問われ、「反省するような内容ではなかった。何もしていないんで。今までの負けとはワケが違う。なんか(説明は)難しい」と続けた。
 何ひとつできずにケラモフの流れるような“必勝レシピ”の餌食になった。
「油断?そうっすね。油断と言ってしまえば油断かも」
 まだショックのあまり混乱しているようだった。
「組み技の力は想定内だった。なんか右足が引っかかってテイクダウンされた。マウントのキープ力は、今までやった選手と比べものにならないくらいに強かった」
 素直に敗戦を認めた。
 右ヒジを落とされた、その右ホオは腫れ、痛々しく赤く傷ついていた。
「ケガ?大丈夫です」
 気丈に、そう返したが、相当のダメージがあったのだろう。エスケープできなかった理由のひとつは、ヒジ打ちで脳が揺れた影響もあったのかもしれない。

 

朝倉未来を絞め落してRIZINフェザー級王者となったヴガール・ケラモフ(写真・RIZIN FF)

 

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