「あまり構えたりせずに…」サウジ競演3日前に井上尚弥と中谷潤人がリング誌企画で異例の緊急対談…雑談もなくビッグバンが対戦相手の情報もゲットしなかった理由とは?
プロボクシングの「The Ring V: Night of the Samurai」(27日)の公式会見が25日、サウジアラビア・リヤドのグローバルシアターで行われた。スーパーバンタム級のテストマッチに挑む中谷潤人(27、M.T)は、今大会の主催者の一つである「リング誌」のポッドキャスト番組「ミスター・ベルサーチ・ポッドキャスト 」で行った井上尚弥(32、大橋)との緊急対談収録が前日だったこと、雑談や対戦相手の情報収集もしなかったことなどを明かした。来年5月の東京ドーム決戦に向けて2人の対決はすでにスタートしている。

いつもの試合2日前のやつれた感は皆無だ。
「順調。後は体重をコントロールするだけの状態にある。エネルギーにあふれて調整ができています」
リミットまで残り1キロは、バンタム級時代と同じペース。それでも見た目も本人の体感もまるで違う。
「体重を落とすダメージは少ない。調子もいい。あとはスピードにパワーがのっていけるか。タイミングをどれだけ取っていけるか。そこを感じながらやっていきたい」
階級の壁は存在する。
階級を上げるとKO率が下がるボクサーと、減量苦から解放されたことでパフォーマンスがアップするボクサーに分かれる。
「僕はきつくなって上げている。バンタムよりスーパーバンタムが絶対いいという感覚を今持って調整でてきる。そういう不安要素は試される部分ではあるが、楽しんでパフォーマンスができればいい。練習の段階で経験を積んでいる」
中谷は後者だ。
WBC同級10位のセバスチャン・ヘルナンデス(メキシコ)とのフェイスオフは約13秒。終わると右手がガッチリ握手を交わした。
「すでにホテルのエントランスであってグータッチをしています。(彼も)しっかりと覚悟もってサウジに入ってきている」
そう感じた。
「相手の選手はパンチがある。組み立ててきたものを一発で崩される可能性は多いにある。そこに気をつけて戦っていきたい。もらってしまえば効いてしまうパンチは持っている。集中力は最大限にもって向き合いたい」
一方のヘルナンデスは会見で「中谷はグッドファイターだ。でもオレは準備ができている。私の家族の為にもベストパフォーマンスを出す。エキサイトしている」との覚悟を口にしている。
ヘルナンデスの父親は「日本にも行ったことがある。中谷がいいボクサーだが、こちらはそれ以上に絶好調。この試合に勝って井上尚弥とやりたい」と息巻いていた。
この日、井上と中谷の緊急対談の動画がリング誌の「ミスター・ベルサーチ・ポッドキャスト」にアップされた。
公式会見にも出席したリング誌の最高責任者であるリック・リーノ氏が司会を務めた。中谷によると、ワークアウトのあった前日の24日に行われたという。
2人は向かい合って座り、今回の対戦相手の印象や意気込みを聞かれなぜボクシングを始めたという基本的な質問もあった。
2人がシンクロしたのは、互いの評価を語り合った場面。
井上が中谷について「ここ最近、急成長しているものを感じます。パウンド・フォー・パウンドにふさわしい試合をここ最近していて、すごくリスペクトも評価も高いです」と称えたが、中谷は井上について「何試合か現地でも見させてもらっているので、そこでイメージはさせてもらっています」と語るの留めた。
リーノ氏に「そのイメージは?」と突っ込まれると「それは実際に戦ってみないと分からないですね」と表情を崩して笑った。
だが、井上はまったく無表情のまま。ピリピリ感が画面を通じて伝わってくる。対談というより2人が並んでそれぞれの意見を聞くといった展開になってしまっていた。

