なぜ有馬記念は荒れたのか…勝ったのはミュージアムマイル…4着に沈んだレガレイラ“包囲網”はあったのか?
中央競馬の「第70回有馬記念」(3歳上、GI、芝2500m、1着賞金5億円)は28日、千葉の中山競馬場で行われ、強い3歳世代の一角で3番人気のミュージアムマイル(牡3、高柳大輔厩舎)が皐月賞に続くGⅠ2勝目を飾った。勝ちタイムは2分31秒5。中団後方に構え、最後の直線で力強く差し切り、高らかに世代交代を告げた。牝馬初の連覇を目指した1番人気のレガレイラ(牝4、木村哲也厩舎)は”包囲網”にあったかのように勝負所で包まれ、差し及ばずの4着。2着には12番人気のコスモキュランダが初ブリンカー効果と中山巧者ぶりを発揮し波乱を演出。2番人気ダノンデサイルは2年連続の3着だった。
「ドリーム・カムズ・トゥルー!」
若きチャレンジャーが名手の頭脳プレーで古馬を撃破した。3番人気のミュージアムマイルは上々のスタートを切ると中団後方にじっくりと待機。最後の直線は外からダノンデサイルを交わすと、先行策から大金星を狙ったコスモキュランダもとらえ半馬身差で差し切った。
よほどうれしかったのだろう。鞍上のクリスチャン・デムーロ騎手はフィニッシュの瞬間ムチを掲げてど派手なガッツポーズで喜びを爆発させた。
「ドリーム・カムズ・トゥルー!」
年末の大一番を制し、興奮を抑えきれない様子だった。
無理もない。10番人気のシャフリヤールで挑んだ昨年はレガレイラと鼻差の2着。前年の有馬の悔しさを有馬で晴らすことができた。。
「リベンジができてすごく嬉しく思いますし、去年はレガレイラに自分の夢を絶たれてしまったので、今回は自分の夢をつかむことができてとても嬉しく思います」
1週前のGⅠ朝日杯FSをカヴァレリッツォで勝利。枠順抽選では自らがクジを引き、2枠4番の絶好枠をつかんだ。いい流れがきていることを感じ取ったクリスチャン騎手は「朝日杯でも去年の2着から今年は勝つことができた。有馬記念もそうなるんじゃないかな」と自己暗示をかけていた。
レースでのポイントは2つ。
向正面に入って、馬群から離れて先行していた武豊騎手のメイショウタバルが動き、ハナへ立った。ここで場内もどよめいたが、ミュージアムマイルは微動だにせず、後方で脚をためた。
最大の見せ場は4コーナーから直線にかけてのコース取りだ。ダノンデサイルの直後で機をうかがう。さらに、ようやくエンジンが掛かり始めたレガレイラの動きを察すると、ダノンデサイルもうまく利用して、レガレイラに蓋をして内へ封じ込めた。
この2頭によるレガレイラ”包囲網”が完成し、勝負あり。ここで進路をしっかり確保したミュージアムマイルは、ためたエネルギーを爆発させ、パワフルな末脚で一気に差し切った。
「ダノンデサイルが一番強敵だと思っていたので、道中はずっとダノンデサイルの後ろで競馬をしていました。ダノンデサイルを4コーナーで見た時に、自分の進路を作ってくれるんだと信じて、外に回して、進路ができました。コスモの手応えが良かったが、よく差してくれた」
好プレーを自画自賛した。
兄のミルコ・デムーロ騎手も2010年にヴィクトワールピサで制しており、兄弟での有馬制覇は史上初だ。
「有馬記念が素晴らしいレースというのは知っています。しかも今年は70周年。そういう時に勝ててすごく嬉しかったです」

