• HOME
  • 記事
  • 競馬
  • なぜ「天皇賞・春」で1番人気タイトルホルダーに競走中止のアクデントが起きたのか…淀の“魔の下り坂”で繰り返された悲劇
「天皇賞・春」で1番人気に支持されたタイトルホルダーがまさかの競争中止。異変に気づいた横山和生騎手の“英断”だった(写真は昨年の凱旋門賞:Panoramic/アフロ)
「天皇賞・春」で1番人気に支持されたタイトルホルダーがまさかの競争中止。異変に気づいた横山和生騎手の“英断”だった(写真は昨年の凱旋門賞:Panoramic/アフロ)

なぜ「天皇賞・春」で1番人気タイトルホルダーに競走中止のアクデントが起きたのか…淀の“魔の下り坂”で繰り返された悲劇

 「第167回天皇賞・春」(芝・3200メートル)が30日、新装の京都競馬場で行われ、2番人気のジャスティンパレス(牡4、杉山晴)が快勝したが、断然の1番人気で連覇を狙ったタイトルホルダー(牡5、栗田徹)が”魔の下り坂”でバランスを崩して急失速する異変を起こして競走中止となる大波乱があった。レース後の検査の結果、「右前肢跛行(ハ行)」と診断されたが、G13勝の大本命馬に一体何が起こったか。

 「右前肢跛行(ハ行)」の診断

 

 悪夢のような急失速がモニター画面に映し出された。
 単勝1.7倍の1番人気に支持され、連覇を狙ったタイトルホルダーに異変が起きたのは3コーナーにある京都名物、坂の下りだった。先頭を走るタイトルホルダーの直後につけていた伏兵アイアンバローズが、外から進出すると、大本命馬は、ほとんど抵抗できないまま、ズルズルと馬群に飲み込まれ、後方に置かれていったのだ。予期せぬ展開に新装京都での大一番を楽しみに訪れた4万5千人の観衆は、どよめき、悲鳴に変わる。
 最後の直線。先頭に躍り出たディープボンドの外から抜群の手応えで進路を確保したジャスティンパレスが一気に襲いかかったが、そのはるか後方の4コーナーで断然人気のタイトルホルダーは競走を中止していた。鞍上の横山和生騎手が下馬し、パートナーをいたわるように手綱をつかんだまま馬運車が駆けつけるのを待った。
 ジャスティンパレスは6度目の挑戦にして初のGⅠ制覇。勝者は称賛されて当然だが、後味の悪いレースとなったのも事実。解説のため、訪れていた元調教師の1人は、「これも競馬だけど、残念やね」と話していた。

 レース後、横山和生騎手も沈痛な面持ちで「僕からは何も話せません」と言葉を絞り出すのが精いっぱいだった。
 管理する栗田徹調教師は急いで厩舎に駆けつけ、愛馬をチェックした。その後に「馬は大丈夫です」と予後不良など最悪の事態には至っていないと説明し「下り坂で、走りがバラけてしまったみたい。右が硬い感じ。これから検査します」と現状を報告した。
 坂の下りでバランスを崩し、歩様や脚元に違和感がある状態。それからしばらくして診断の結果は「右前肢跛行(ハ行)」と発表された。
 どんな怪我なのか。JRAのホームページによると、こう説明されている。
「歩様に異常をきたしている状態をいう。負重するときに疼痛を示すもの(支柱跛行)、肢の挙楊時および前進時に疼痛を示すもの(懸垂跛行)、両方が混在する跛行(混合跛行)がある。
 跛行の原因には、骨、腱、関節、筋肉、神経等の異常が考えられる。一方、原因がはっきりしない場合、原因があると推測される部位により前肢跛行、後肢跛行(腰部に原因)と呼ばれることもある」
 つまり右前足に体重がかかる際に痛みが発生して、通常の歩様ができない状況を示す。
 早めにフォームの異変に気づいてスピードを落とし、下馬した横山騎手の“英断”とも受け取れるが、レース前から予兆を指摘していた声もあった。
 テレビ解説をしていた元騎手で競馬評論家の安藤勝己さんは本馬場入場時に「横山和生騎手が丹念に馬をほぐしているところが気になります」と指摘。同じく元騎手の細江純子さんも、歩様の異変など、これまでのレースとの違いを気にかけていた。
 ある調教師は、「3年ぶりの京都開催でほとんどの馬が坂の上り下りに慣れていない。タイトルホルダーはかなり力んで走っているように見えた」と指摘した。

 

関連記事一覧