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オリックスの本拠地Vは27年ぶりだ(写真・月岡陽一/アフロ)
オリックスの本拠地Vは27年ぶりだ(写真・月岡陽一/アフロ)

なぜオリックスは46年ぶりの3連覇を果たせたのか…レギュラーを固定せず吉田正尚の穴を埋めた“中嶋マジック”

 昨季打率.335、21本塁打、88打点の数字を残した吉田正尚がポスティングによりレッドソックスへ移籍。その穴をどう埋めるかがチームのテーマだった。
 FA争奪戦で合意寸前だった日ハムの近藤はソフトバンクにとられたが、西武の森の獲得に成功した。その森は、7月1日の日本ハム戦で走塁の際に左太もも裏を痛めて、8月8日に復帰するまで約1か月の長期離脱を余儀なくされたが、打率.291、16本塁打、60打点の数字を残し、吉田の穴を埋めた。本塁打、打点はチーム2冠で、得点圏打率の.385が示すように勝負強かった。
「自分一人で穴を埋められるわけはないと思っていた。全員で正尚さんの穴を埋めようと思っていた。満足のいく結果ではなかったけれど、なんとか1年目で、優勝に貢献できたことがよかった」と森が言う。
 そして想定外のニューヒーローが5年目にしてブレイクした頓宮だろう。現在は、体調不良で3日前に登録抹消されているが、打率.307で首位打者の位置をキープ。16本塁打は森と並びチームトップで、打点も49。森と共にクリーンナップの役割を果たした。
「自分のやれることだけを一生懸命やろうと決めていた。それがいい方向にいって、いい結果が出た」
 優勝会見で、タイトルは?と聞かれ「ゴールデングラブ賞ですか?」ととぼけて返して会場をなごませた。優勝決定後にサプライズのビデオメッセージで登場した吉田正に「ずる休みをするな」と冷やかされたが「体調はもう大丈夫です」と笑顔を見せていた。
 一発はあるが安定感がなく、昨季の打率も.226に終わっていた頓宮がブレイクしたきっかけは、左足のタイミングの取り方を変えたことにある。上げた左足を空中で動かして、その時間を長くしたことで、いわゆる“タメ”ができ、ボールへの対応力が増した。ヒントをもらったのは、亜大の先輩である巨人の松田に声をかけてもらい、自主トレを一緒にしている西武の山川だ。山川の左足の使い方を参考に自分なりに改良を重ねた。
 池田氏が指摘する中嶋監督のベンチワークも見逃せない。
 今季の打順は120通りを越えた。支配下登録の野手のうち、1軍で起用しなかったのは6人だけ。調子を見極めながら、1、2軍を入れ替えて、持てる戦力をフル稼働させた。レギュラーは固定させず、全試合に出場した選手は一人もいない。阪神の岡田監督は、打線を固定させて18年ぶりの優勝を勝ち取ったが、中嶋監督のマネジメントは対照的だ。
 中嶋監督がチャンスを与える中で、育成出身のルーキー茶野、5年目の宜保らの若手が躍動した。前日まで3試合連続でお立ち台に上った杉本も、不振で2軍落ちして、9月5日に1軍昇格したばかり。中嶋監督の人心掌握術が選手の力を最大限に引き出した。
「調子のいい選手、楽しみな選手、いろんな選手がいます。使ってなんとか花開いてもらいたいと使ったが、それがしっかりと戦力になった。とにかく選手の頑張りだと思う。頑張ってくれると使いたくなり、その選手が戦力となり力になった」
 中嶋監督は、自らの采配マジックをそう説明した。

 

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