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オリックスの本拠地Vは27年ぶりだ(写真・月岡陽一/アフロ)
オリックスの本拠地Vは27年ぶりだ(写真・月岡陽一/アフロ)

なぜオリックスは46年ぶりの3連覇を果たせたのか…レギュラーを固定せず吉田正尚の穴を埋めた“中嶋マジック”

 オリックスが20日、京セラドーム大阪でロッテに6-2で逆転勝利をおさめ、3年連続15度目(阪急で10度)のパ・リーグ優勝を果たした。本拠地での優勝は27年ぶり、チームの3連覇は1977年以来、46年ぶりとなった。また阪神、オリックスの関西球団の同時Vは、1964年の阪神、南海(現ソフトバンク)以来59年ぶり。エースの山本由伸(25)、左腕、宮城大弥(22)、160キロの怪物、山下舜平大(21)を軸にした先発陣とブルペン陣に防御率1点台の投手を5人も揃えた盤石の投手力に加え、FAで西武から移籍した森友哉(28)、首位打者に立つブレイクを見せた頓宮裕真(26)らの軸にした打線が奮起。中嶋聡監督(54)がレギュラーを固定せず、選手の調子を見極めながら起用していく巧みなベンチワークを見せて、2位ロッテに14.5ゲーム差をつけての圧勝Vを演出した。

 中嶋監督は「最高です」とニヒルに笑う

 

 その瞬間、山崎颯一郎がグラブをドームの天井に向かって高く放り投げた。
「抱きついて思い切り飛ぼうと思った」というFA移籍1年目の森がマウンドへ走って飛びつき、たちまち歓喜の輪ができた。ベンチから飛び出してきたエースの山本はミネラルウォーターシャワーを森と山崎颯一郎にふりまいた。
 中嶋監督は、頓宮、森、山本と順に抱き合った後に5度、宙に舞った。2年連続で、お預けとなっていた本拠地V。本拠地での胴上げはイチローを擁して優勝した1996年まで遡らねばならない。満員となった3万5619人のファンの前での優勝インタビュー。
「最高です」
 中嶋監督はニヒルに笑った。
「何とかここで胴上げしたいと思っていましたので本当にうれしい。7回までは、さすがに嘘をついたかなと思いましたが、何とか逆転してくれて、選手が凄いなと思いました」
 中嶋監督は前日のロッテ戦後に「明日決める」とファンに公約していた。「7回まで嘘をついたかな」とは、そのことだ。
 今季のオリックスの強さを象徴するようなゲームだった。ロッテに2点を先行されて迎えた7回二死から逆襲が始まった。
 ゴンザレスが死球で出塁し、打席には選手会長の“ラオウ”こと杉本。地鳴りのような歓声が心に響き「普段は打てる気がしないが、あの打席は打てる気がした」という。暴投で得点圏に走者が進み、粘りに粘った後の9球目。杉本が食らいついて投手の足元からセンターへ抜けていくタイムリーを放ちドームの空気が一変した。
 T―岡田が四球でつなぎ、紅林もしぶとく逆方向の一、二塁間へ弾き返して、杉本が生還。ついに同点に追いつき、ベンチから身を乗り出した中嶋監督が「よし!」と叫んだ。さらに、この日が24歳の誕生日だった2年目の野口の詰まった打球がライト前へと落ちる。ここで逆転。続く中川も右中間を破るタイムリー三塁打で5-2とリードを広げ、西野もタイムリーで続き、嵐の4連打で6点を奪い、優勝を決定づけた。
 なぜオリックスは3連覇を果たせたのか。
 パ・リーグの野球に詳しい元阪神、ダイエー(現ソフトバンク)、ヤクルトの池田親興氏は、こう分析した。
「総合力の勝利。自慢の投手力を考えると3点を取れば勝てるが、吉田正尚が抜けた中で、どう点を取るかがテーマだった。中嶋監督は選手の調子を見極めながら、1、2軍を頻繁に入れ替え、70人の戦力をうまく機能させるベンチワークで、その穴を見事に埋めた。選手のモチベーションを上げてチームの戦力を最大に引き出したと言っていい。中嶋監督の采配は基本、手堅いが、時折、意表を突く采配があり、それが当たった。頓宮のブレイク、FA移籍の森の活躍も大きかった。そこに連覇の経験がプラスされ、勝つべくして勝った。昨年まではマジックが出ない中での優勝だったが、今年は14.5ゲーム差。チームに力がついた証拠だと思う」

 

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