• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「戦える喜びを力に」ドーピング違反で2年間の出場停止処分を受けた女子ボクサー濱本紗也が一度はあきらめたパリ五輪を目指して全日本選手権の復活リングへ
3年ぶりとなる全日本選手権でパリ五輪予選への出場権獲得を狙う濱本紗也。ドーピング違反で2年の出場停止処分を受けていた
3年ぶりとなる全日本選手権でパリ五輪予選への出場権獲得を狙う濱本紗也。ドーピング違反で2年の出場停止処分を受けていた

「戦える喜びを力に」ドーピング違反で2年間の出場停止処分を受けた女子ボクサー濱本紗也が一度はあきらめたパリ五輪を目指して全日本選手権の復活リングへ

 アマチュアボクシングのパリ五輪世界予選への出場権のかかる全日本選手権が東京の墨田区体育館で行われている。東京五輪のフェザー級で金メダルを獲得した入江聖奈(23)が競技から引退、そのフェザー級の新女王の座を狙う出場6選手の中に2年間に及ぶドーピング違反の出場停止期間を乗り越えて復帰してきた一人の女性ボクサーがいる。過去にバンタム級、ライト級で全日本王者となっている濱本紗也(24、イワサ・アンド・エムズ)だ。今日23日が1回戦。一度はあきらめかけた五輪出場の夢をかけて運命のリングに上がる。

 村田諒太の母校の後輩ボクサー

 

 ボクシングができる喜びを力に変えたい。
 3年ぶりにパリ五輪世界予選の代表選考会を兼ねた全日本選手権のリングに帰ってきた濱本は“いい顔”をしていた。
 「やっとここに帰ってこれました」
 女子フェザー級のリミットは57キロ。減量も順調で前日に300から400グラムオーバーまで落として寝て当日計量を迎えるという。
 ドン底に突き落とされたのは2年前だ。
 濱本は、ロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級王者になった村田諒太らを生んだ名門の南京都高(現・京都廣学館高)出身。日大に進み、全日本のバンタム級で優勝、2019年にはボックスオフを制止てライト級の東京五輪世界最終予選の日本代表にも選ばれたボクサーだが、2021年2月の定期講習会の際に実施されたドーピング検査で違反物質「フロセミド」が検出された。
 利尿剤の一種で、減量に効果があり、他の違反物質を覆い隠すために使われる物質だが、当時は試合もなく減量も行っておらず、まったく身に覚えのない指摘だった。異議を申し立てB検体の検査が実施されたが、同じ物質が検出された。そのデータを目の前に突き出された濱本は頭の中が真っ白になったという。
「口から摂っていないものは検出されないと説明されました。怖かった。サプリは色々と飲んでいましたが、言わば、毒みたいなものが知らないうちに体内に入っていたと思うとぞっとしました」
 潔白を証明するためにスポーツ仲裁裁判所に訴える手段も考えたが、当時使用していた海外のサプリメントなどの成分検査などを詳しく行う必要があり、多大な費用と共に結論まで最悪「4年から6年かかる」とも指摘された。東京五輪出場を逃した濱本は、パリ五輪出場を狙っていたが、そうなると、その夢も絶たれることになる。所属していた日大や、専属トレーナーで現在日大の統括コーチでもある藤原俊志らと相談し、潔白を争わず、検査結果とペナルティを受け入れることにした。
「一番早く復帰できる道を考えたんです」
 発表されたのは2021年の8月。JADA(日本アンチドーピング機構)に意図的に使用していないことは認められ、競技会への出場停止期間は2023年の3月25日までの2年間となり、パリ五輪の世界予選への出場切符を争う全日本選手権への出場には、ギリギリで間に合うことになった。ただ、その間、練習は許されるが、競技会には、一切出場ができない。ブランクによる試合勘の欠如、ジャッジへ好印象を与えるための実績を積めないなど様々な障壁が立ちはだかる。なにしろモチベーションを維持できるか、どうか。

 

関連記事一覧