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大谷翔平が2024年の開幕に間に合う可能性を執刀医師が証言(ドジャース公式Xより)
大谷翔平が2024年の開幕に間に合う可能性を執刀医師が証言(ドジャース公式Xより)

「金満球団を有利にするヌケ穴」「パンドラの箱が開けられた」全米を巻き込んだ大谷翔平の契約金97%“後払い”への賛否と誤解

 ドジャースと10年7億ドル(約1015億円)で契約した大谷翔平(29)が、球団にかかる贅沢税を軽減するために約97%を後払いにするという異例の契約を結んだことが全米に波紋を広げている。「金満球団の抜け穴だ」「野球を破綻させる」という批判の声や、MLB機構が次の労使協定の改正交渉の際に後払いの制限を申し出るのでは?という議論までなされている。大谷が15日の会見で前代未聞となる形での後払いを申し出た理由についてどう説明をするかにも注目が集まる。

 贅沢税回避の誤解

 ESPNなどが複数のメディアが「常識では考えられない」と報じた大谷の後払い契約が波紋を広げている。10年7億ドル(約1015億円)の97%にあたる6億8000万ドル(約986億円)を後払いにし、年俸は200万ドル(約3億円)で残りは2034年からの10年間に無利子で支払われるというのだ。
 これまでも後払いにしてきた選手は少なくないが、その部分は5%ほどで、先になればなるほど貨幣価値が下がるため、その支払いに利子をつけるケースも多い。前代未聞の契約方式が全米に波紋を広げるのも当然か。
 自らの年俸が贅沢税の負担となりチームの補強に影響が出ることを避けるため、大谷が申し入れたものだが、この後払いの中身を巡って賛否の声が起きている。
 経済誌のフォーブス誌は、「今小規模、中規模市場の球団のオーナーや上級幹部たちはどのように感じているだろうか?(大型市場のチームと)争うことはとても難しいことだったが、それはドジャースのようなヘビー級の球団が、こうしたアプローチを取ろうとする前のことだった。大谷が並外れた才能を持っているためで、こうした形の契約が、MLBのスーパースターたちから続々と出てくるようなことはないだろうが、インフレを誘発するだろう。契約金額が2倍に上がったかもしれない日本のFA投手の山本由伸に何が起きるかを見る必要がある。FAの高額化については問題はない。しかし保証された金額の97%を後払いにするような契約はどうだろう。これは未知の領域だ」と疑問を投げかけた。
 さらに「球界のオーナー間の亀裂が起きても驚きではない。また選手会は喜んでいるのだろうか。ライバル球団のファンはどう思っているのだろうか。ドジャースは他のチームにチャンスを与えない最強のロースターを簡単に構築する。彼らは、リーグのどこの球団よりも悪役となってしまうだろう」などとネガティブな意見を報じた。
 SNS上でも「金満球団が有利となるヌケ穴ではないか」「この契約は野球界を破綻させてしまうことになるかも」などの批判の声が少なからずあった。
 また大谷は、スポンサー収入など年俸以外の収入が5000万ドル(約72億5000万円)見込まれることや、カリフォルニア州の高額な税金を回避するために、前例のない97%もの後払いを決断したのではないかという分析記事もザ・リンガーなど複数の米メディアが掲載している。
 だが、今回の後払いと贅沢税の回避については誤解がある。
 2024年度の贅沢税の対象となる年俸総額の上限は2億3700万ドル(約344億円)。大谷が本来受け取るはずの7000万ドル(約101億円)のうち97%を後払いにすることで年俸が200万ドル(約3億円)となり、6800万ドル(約98億6000万円)を軽減できるとの憶測がファンの間では生まれたが、実は、後払いが発生する場合は、10年後の物価上昇などを考慮して年俸が換算されるため贅沢税の対象となる大谷の年俸は200万ドル‘(3億円)ではなく4600万ドル(約66億7000万円)となるのだ。
 オフの情報に詳しいトレード・ルーマーズも「大谷の契約構造が贅沢税の回避ではない理由」とのタイトルを取った記事の中で、その誤解の部分をこう説明した。

 

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