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満塁のチャンスにボール球を振って三振した森下はベンチで泣いた
満塁のチャンスにボール球を振って三振した森下はベンチで泣いた

「あんな姿。お客さんに失礼」なぜ阪神の岡田監督は無死満塁の好機に三振して泣いたルーキー森下に怒りの途中交代を命じたのか

 阪神のルーキー森下翔太(23)が29日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNAの5回無死満塁の好機に空振りの三振に倒れてベンチで涙を流した。チームは3-5で敗戦、怒りの岡田彰布監督(65)から「あんな姿(ボール球ばかりを振る)は、お客さんに失礼」と途中交代を告げられた。ここ10試合で打率.125とスランプに陥っているルーキーの復活が18日からのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ突破のカギを握るのだが、岡田監督は今日30日の広島戦のスタメン落ちを示唆した。

 ボール球ばかりに手を出す

 優勝に貢献したドラ1ルーキーが泣いた。
 ベンチに帰った森下は大きなタオルで顔を覆い、あふれる涙を何度もぬぐった。隣に座る佐藤が何やら声をかけて励ますが目は真っ赤、涙は止まらなかった。悔し涙か。チームに貢献できなかった責任感からくる涙か。
 1点を追う5回無死満塁。もう青息吐息だった左腕の石田がフルカウントから投じた低めのチェンジアップに手を出して空振りの三振。見送ればボール、押し出しの四球だった。初回の第一打席もボール球のチェンジアップを振って空振りの三振、3回の第二打席も低めに落ちるボール球のチェンジアップを振ってカウントを悪くしてから三塁ゴロに倒れていた。
 ボール球に手を出す悪循環が止まらない。
 岡田監督は、5回の満塁の打席では、平田ヘッドに「最後またボール球振って三振するわ」と予告していたほど。この回限りでベンチに下げた。
 試合後の岡田監督は、森下を交代させた理由をこう熱弁した。
「アカンやろ。ストライクは1球も振らず、振ったらみんなボール。もうお客さんに見せられへんよ。はっきり言って。あんな姿」
 記者団からベンチで泣いていたことを指摘され、「自分で崩れていっているんやから。ボール球を振って。ずっと同じ事の繰り返しやろ。何回も今まで手助けしたり、いろんなことをやったけど。前も言うたやんか。自分でわからんとあかんよ。自分で分かるやろ?」と続けた。
 顔は笑っていたが、口調は厳しく怒気を含んでいた。

 岡田監督の言う「あんな姿」とは、プロとしてボール球を振る、過ちを繰り返していることを示す。
 この10試合で打率.125。23日のヤクルト戦でラッキーなヒットから3安打して調子を取り戻したかに見えたが、崩れた形を修正することはできていなかった。体が動いてボールを迎えにいき、振り出すときにバットが遠回りする。ボールを見極める“静”の時間を打撃の中で作ることできていないから、ボール球にバットが止まらない。積極性とフルスイングが森下の持ち味だが、ストライクゾーンを振ってこそ結果がついてくる。
 岡田監督は、プロ論を語りつつ、今日30日の広島戦のスタメン落ちを示唆した。
「あんな姿を見せられへんと言うてるやんか。失礼やわな。(お客さんに)お金を払って球場に来てもらって、あの姿はあかんわ。本人が自分でそういう風になっていっているわけやからな。自分で崩れていくわけやからな。それは打席の中のこと。オレらがそこまでフォローしてもな。ボール球を振るなと言うても、打席で自分1人になった時には、振るんやから、もうどうしようもないよ」

 森下のポテンシャルを認めているからこその激辛の叱咤だ。
 打席の中では誰も助けてはくれない。
 今季は2度のファーム落ちを経験した。だが、岡田監督のアドバイスもあり、フォーム修正などにも着手し、這い上がって一つ目のプロの壁を乗り越え、6月23日に再昇格してからは1軍に定着。3番打者として殊勲打も、ゲームを決める一打も放ち、18年ぶりのVに大きく貢献した。打率.231はいただけないが、10本塁打、41打点は、及第点の数字だろう。野球への理解度が高い森下ならば、ここに来て立ち塞がった2つ目の壁もきっと乗り越えることができるはず。もがき苦しんで這い上がるしかない。泣いている場合ではないのである。

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