• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「KOできない天心」の汚名を返上した那須川が「日本でも東洋でも挑戦したい。(批判を)黙らせたい」と宣言した理由とは?
那須川天心が世界ランカーに挑み転向3戦目にして初のTKO勝利(写真/山口裕朗)
那須川天心が世界ランカーに挑み転向3戦目にして初のTKO勝利(写真/山口裕朗)

「KOできない天心」の汚名を返上した那須川が「日本でも東洋でも挑戦したい。(批判を)黙らせたい」と宣言した理由とは?

 プロボクシングへの転向3戦目となった那須川天心(25、帝拳)が23日、エディオンアリーナ大阪でWBA、WBOのバンタム級14位にランクされている世界ランカーのルイス・ロブレス(25、メキシコ)に挑み、3ラウンド終了時点でTKO勝利した。右足を痛めたロブレスが棄権したもの。倒して勝ったわけではないが「KOする詐欺」の汚名を返上した天心は、2024年中に日本タイトルなどのベルト獲りに乗り出すことを明かした。

GOサインが出ていたが…その前に相手が棄権でTKO

「まじか?」
 天心が苦笑いで吐き捨てた。
 3ラウンドが終了した時点で世界ランカーのロブレスは椅子から立ち上がらず、右のシューズの紐をゆるめはじめた。右足首を痛めたようで試合続行不能、棄権の意思をレフェリーに伝えた。
 実は、天心陣営では4ラウンドにGOサインが出されていた。
 序盤からリングの中央で戦い、無駄な動きをはぶいてプレスをかけ、右ジャブから角度を変えた左のボディストレートをいくつも叩き込んでおり、「プレスをまとめたときにボディが入ってめちゃくちゃ効いていた。ラスト10秒。で。うっという声も聞こえた」との手ごたえがあり、天心は、4ラウンドにラッシュをかけてKOするつもりでいたのである。
 それだけに「ここからという時に終わった」と残念がるのも当然。それでも「気持ちは折った」と、プロ3戦目のTKO勝利に胸を張った。
 相手が足をどこでどう痛めたかは「わからなかった」という。
 プロ3戦目で世界ランカーを下がらせて何もさせなかった。進化を印象づけたと言っていい。
「プレスをかけるのが今回のテーマ。打って外して(のボクシングで)下がるのではなく、自分で圧をかけられるようになった。自分から攻めていく。前の手の使い方もうまくなった。ジャブの差し合いでも負けない。プレスをかけて、あとはしっかりガードして、そこで返す。狙い通り。全局面で勝った。外から見ているとわからないかもしれないが、何をやっても無理だという展開にした。ロマチェンコみたいに」
 天心の説明に誇張はなく、自らのそのスタイルを、精密マシンとも評された元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に重ねてみせた。
 担当の元2階級制覇王者の粟生隆寛トレーナーも「いろんな無駄がなくなって安定感が出た。あのまま続けていたらあと1、2回で終わる展開を作れた」と評価した。
 粟生トレーナーは、試合前から、ボディを効かせてプレスをかけてロープに張り付け、上下の猛ラッシュでレフェリーストップを勝ち取るイメージを抱いているという話をしていた。
 まさかのアクシデントによる幕引きとなったが、「これもボクシング」と、天心に語りかけた。今回は、これまでのスーパーバンタム級のリミットより1ポンド(約450グラム)下げた。バンタム級への転級テストだったが、粟生トレーナーは「僕と違って減量は上手。心配はない」と太鼓判を押す。
「KOする詐欺はやめる」
 そう宣言したのは、10日の公開練習だった。
 昨年4月のデビュー戦は日本ランカーの与那覇勇気(真正)からダウンを奪いながらも判定決着。同9月の第2戦には「倒すこと」をテーマとして臨みルイス・グスマン(メキシコ)からダウンシーンは演出したが、またしても判定にもつれこみ、「KOできない天心」が話題にもなった。それらを踏まえての「詐欺はあかんでしょう」という公約だった。厳密にいえば倒してはいないが、記録としてはTKO勝利となり汚名は返上した。

 

関連記事一覧