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王座奪回に失敗した五輪連覇のロベイシ・ラミレス(資料写真・松尾/アフロスポーツ)
王座奪回に失敗した五輪連覇のロベイシ・ラミレス(資料写真・松尾/アフロスポーツ)

「井上尚弥の歴史を終わらせる」はずの五輪連覇ラミレスがWBO世界戦でまさかの6R棄権負けで「自分が終わる」も「肘打ちの反則で目が見えなくなった」と猛抗議

 プロボクシングのWBO世界フェザー級タイトルマッチが7日(8日)米国アリゾナ州フェニックスで行われ、前王者でロンドン、リオ五輪金メダリストのロベイシ・ラミレス(30、キューバ)が6回12秒に「右目が見えない」と棄権を申し入れて王者のラファエル・エスピノサ(30、メキシコ)にTKO負けした。ラミレスは24日に防衛戦を控えるスーパーバンタム級の井上尚弥(31、大橋)をフェザー級王者として待ち受け「私なら歴史を終わらせることができる」と豪語していたが、その構想が崩れて、モンスターの対戦候補から脱落した。ただ試合後に反則の肘打ち攻撃で右目を痛めたと猛抗議。眼窩底骨折していたため復帰には時間が必要だが、今後、WBOに提訴を行う可能性も出てきている。

 「レフェリーは聞き入れてくれなかった」

 一体何が起きたんだ?
 突然のフィナーレに8538人で埋まったフットプリントセンターが騒然となった。6ラウンド開始直後。エスピノサが右のストレートを軽く放ち、それがラミレスの右目付近を直撃すると、五輪の2大会連続金メダリストは、左手を上げてレフェリーに何かを訴えて、後ろを向いた。
 エスピノサも一瞬、何が起きたがわからない。だが、レフェリーが大きく手をふってTKOを宣告すると、両手をあげて喜び、コーナーに駆け上がって雄叫びをあげた。
 この試合は、2023年12月にラミレスがエスピノサに僅差の0-2判定で敗れて王座から陥落して以来の再戦だった。ラミレスは、王座奪回に自信を持ち、試合前のブックメーカーの予想もラミレスが有利だった。それゆえにフェザー級王者に返り咲いた後の計画として、井上に挑戦状を叩きつけていた。
「私のボクシングは強いし井上の歴史を終わらせることができる」
 井上は24日に控えているWBO&IBF1位サム・グッドマン(豪州)との防衛戦をクリアすると、2025年には、まだスーパーバンタム級に留まり、海外再進出、WBC世界バンタム級王者、中谷潤人(M.T)との究極の日本人対決を終えてから2026年にいよいよフェザー級に転級する予定。ラミレスは、そこまでベルトを保持して、モンスターの挑戦を受けたいと考えていたのだ。
「私は井上を実際に見た。彼は偉大なファイターであり、レジェンドだ。でも、私の印象では、彼は126ポンド(57.15キロ、フェザー級)にしては小柄だ。私も私の階級ではそれほど大きくないが、彼は階級を上げるには小さいし、ある時点で限界に達する。どんなにボクシングがうまくても、階級を上げると、ある時点で、その(ナチュラルな)階級の選手たちのパワーに勝てなくなる」
 ラミレスは井上に勝てる根拠まで力説していた。
 ラミレスは、昨年7月にWBO世界同級王者として来日し、有明アリーナでロンドン五輪銅メダリストの清水聡(大橋)の挑戦を受け、5ラウンドでTKO勝利しているが、その興行のメインが井上がWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(米国)にTKO勝利した試合。間近でモンスターの凄さを実感じた上で、フェザー級での限界説を論じていた。
 それだけ豪語して「井上を終わらせるはず」の元王者が、ベルト奪還もできずに自分が終わってしまった。「口だけボクサー?」との批判を受けても仕方がないところだが、この敗戦には、のっぴきならない理由があった。
 ラミレスが事情を明かす。
「右目が見えなくなった。4ラウンドの肘打ちでダブルビジョン(モノが二重に見える)になったんだ。レフェリーに訴えたが、聞き入れてくれなかった」
 反則の肘打ち攻撃があったと強く抗議した。実際、右ストレートの一撃のダメージにしては、おかしいほど、ラミレスの右目は真っ赤でその周りも大きく腫れてしまっていた。

 

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