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年間表彰を受けたメンバー。左から堤、寺地拳四朗、井上尚弥、晝田瑞希、那須川天心(写真・山口裕朗)
年間表彰を受けたメンバー。左から堤、寺地拳四朗、井上尚弥、晝田瑞希、那須川天心(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥はMVP授賞式で亡くなった穴口一輝氏の年間最高試合を「ファンの心の中で生き続け輝き続ける」と称えたのか?

 ボクシングの2023年度の年間優秀選手表彰式が19日、都内の東京ドームホテルで行われ、6年連続7回目の最優秀選手賞を含む、KO賞、年間最高試合賞(世界戦)の3冠に輝いたスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(30、大橋)が、その受賞スピーチで年間最高試合賞(世界戦以外)を獲得した故・穴口一輝氏(享年23、真正)について「ファンの心の中で生き続け輝き続ける」と触れ、追悼の言葉に変えた。また穴口氏の対戦相手で努力・敢闘賞との2冠となった元日本バンタム級王者の堤聖也(28、角海老宝石)も、穴口氏が亡くなってい以来、初めてメディアの取材に応じて現在の心境と今後に向けての覚悟を口にした。

 「ボクシングとは、勇気や感動を与えるとともに、常に危険と隣り合わせのスポーツ」

 式の冒頭で2月2日に亡くなった穴口氏への黙祷が捧げられた。
 昨年12月26日に有明アリーナで行われた穴口氏と日本バンタム級王者の堤とのタイトル戦は年間最高試合(世界戦以外)に選出された。4度ダウンを喫した穴口氏は、試合後に意識を失い、病院に救急搬送され、緊急の開頭手術を受け、闘病していたが、その賞の発表があった日に帰らぬ人となった。
 その試合は、井上がマーロン・タパレス(フィリピン)にKO勝利して史上2人目となる2階級4団体制覇を成し遂げたメインカードのセミファイナルだった。優勝賞金1000万円がかかった「井上尚弥4団体統一記念・バンタム級モンスタートーナメント」の決勝でもあった。
 プロボクシングのMVP&KO賞&年間最高試合賞(世界戦)の3冠に輝いた井上は、受賞のスピーチで関係各位に感謝の意を述べた後に、こう切り出した。
「選手たちは覚悟を持ってリングに上がっています。そして、ボクシングとは、勇気や感動を与えるとともに、常に危険と隣り合わせのスポーツなんだということを再認識しなければならない。そして、僕が今ここで皆さんにお伝えしたいことは、12月26日の国内年間最高試合を受賞した穴口選手の試合は、あの日見たファンの皆さんの心の中で、生き続け輝き続けると思います」
 プロボクサー代表としての穴口氏への追悼のメッセージだった。
 井上は、「事前にスピーチで(穴口氏の試合について)触れるか触れないか会長とも相談した。選手代表ということで、少しは話させていただきましたが、伝えたいことはあれだけじゃなくたくさんありますが、今、この場で言うことではない」と、年間最高試合について触れた理由を説明した。
 悲しい事故が起きた試合が年間最高試合に選出されたことに対して、総合格闘家の青木真也が、自身のSNSに「年間最高試合が死亡事故なのはその競技を疑わざるをえないと思うんですよね」「事故が起こった試合を評価対象に挙げてしまうことに対する違和感ですよ。安全に対する意識が低いのはいかんと思います」などと投稿して問題提起した。
 これに対して井上は反論。
「年間最高試合に選ばれたのは穴口選手へのエールでもあったと思います。 受賞された40分後に息を引き取ったと聞いてますので皆さんには誤解だけはして欲しくないと思います」と綴り、亡くなった穴口氏の名誉を守った。

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