• HOME
  • 記事
  • 野球
  • え?9回二死満塁でセーフティースクイズ?笑えない“チグハグ”なミス連発の中日が今季初のサヨナラ勝利をつかめた理由とは…松山の“魂の20球”&木下の“三味線”と井上采配
中日の新守護神の松山が魂の20球でサヨナラ勝利を呼び込む(資料写真・黒田史夫)
中日の新守護神の松山が魂の20球でサヨナラ勝利を呼び込む(資料写真・黒田史夫)

え?9回二死満塁でセーフティースクイズ?笑えない“チグハグ”なミス連発の中日が今季初のサヨナラ勝利をつかめた理由とは…松山の“魂の20球”&木下の“三味線”と井上采配

 アクシデントがあった。立ち上がりに1点を失ったが、2回から5回まで打者12人をパーフェクトに抑えていた大野が1-1で迎えた6回に先頭の近本に内野安打を許し、続くバントの構えをしていた中野に2球ボールが続いたところで、突如異変を訴えて緊急降板となったのだ。5回に足がつり、続投を訴えたものの、やはりその影響が出た。カウント途中から救援登板した祖父江は準備不足で中野に四球を与え、佐藤、前川のタイムリーなどで2-4と勝ち越しを許したのだ。
 笑えないミスも連発した。その裏、代打高橋のタイムリーで追いつくが、さらに二死一、三塁の勝ち越し機に一塁走者の高橋が牽制に引っかかり、挟まれている間に細川が本塁を狙ったが、タッチアウト。さらに8回には一死二塁からボスラーのセンターを襲った大飛球で二塁走者の山本が打球の判断を謝り三塁へのタッチアップを怠るミスもあった。
 そして3万5000人を超えるバンテリンドームをどよめかせたのが、松山が魂の20球で大ピンチを切り抜けたその裏のサヨナラ機でのまさかの拙攻だった。まず一死一、二塁から途中出場のロドリゲスが、なんと初球を“マン振り”したあとの2球目に一塁側へセーフティバントを試みたのだ。桐敷が追いつき、結果的に送りバントとなったが、ベンチは何もそんなものを求めてはいなかった。井上監督はベンチで憮然としていた。
 さらにバンテリンドームがもう一度ざわつく。岡林が四球を選び、二死満塁となったところで、途中出場の山本が、ロドリゲスと同じく149キロの初球ストレートを“マン振り”で、空振りした後の2球目になんとセーフティースクイズを仕掛けたのだ。一塁側を狙ったが、桐敷の守備範囲。ホームフォースアウトでサヨナラ機を逸してベンチで井上監督は苦笑いを浮かべてクビをひねった。もちろんサインではない。山本の自己判断。
 中日スポーツの報道によると、井上監督は「びっくりした。責めるつもりはない。やるなら一塁側でよかったのか、三塁側ではなかったか、という反省は次に生かしてもらいたい」とコメントしている。裏をかくなら三塁側だっただろう。
 現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人は、「初球のフルスイングの空振りが騙しだったらたいしたものだが、左投手は投げた後に一塁側へ降りるので狙うのであれば三塁側だった。そもそも満塁でのセーフティースクイズはないだろう。裏をかく奇策ではなく、自信のなさの裏返しに見えた」と指摘した。
 延長10回にも走塁ミスがあった。二死から中田が四球を選ぶと代走に樋口を送ったが、細川の打席で湯浅に牽制で刺された。井上監督がリクエストをかけたが判定は覆らなかった。いつ阪神に流れが向いてもおかしくないミスの連発。中日にとって「勝って兜の緒を締めよ」というゲームだった。それだけに同一カード3連勝のかかった今日1日の試合が重要になる。
 その1戦にソフトバンクを戦力外となり、中日で育成契約からスタートした三浦をプロ初先発のマウンドに送る。
「支配下をずっと目標にしてやってきた彼が、勝ち、勝ちというバトンをつなぐことに変なプレッシャーを持たずして、“晴れ舞台だ、デビューだ”という形で“ノビノビ投げなさい”と、こちらから背中を押して助言したい」
 井上監督はそんなメッセージを送った。

関連記事一覧