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井上尚弥が米ラスベガス決戦でまさかのダウンを喫した(写真・AP/アフロ)
井上尚弥が米ラスベガス決戦でまさかのダウンを喫した(写真・AP/アフロ)

「ダウンをした時に記憶が飛んだのかも。大丈夫じゃなかった」井上尚弥の衝撃ダウンシーンの真実を真吾トレーナーが明かす…「ダウンよりも想定外だったのは…」

 プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が米ラスベガスでWBA1位のラモン・カルデナス(29、米国)を8回逆転TKOで破った衝撃の余波は、今なお続いている。父で専属トレーナーの真吾氏(53)に激闘の真実を聞いた。

 誤算だったカルデナスのジャブ

 「寿命が縮まりましたよ」

 井上尚弥の父であり名参謀の真吾トレーナーが米ラスベガスでのカルデナス戦を振り返り、あの肝を冷やしたまさかのダウンシーンを思い出す。

 2ラウンドに井上がキャリア2度目のダウンを奪われたのだ。

 近い距離で井上が打ち込んだ左フックを頭をさげて外したカルデナスがスイッチして放ったカウンターの左フックが、モンスターの顔面を正面から直撃。井上は腰から崩れるようにしてダウンしたが、すぐさま体をひねって、両膝で上半身を立てる体勢を取り、セコンドに右手をふって「大丈夫」と合図した。

「その瞬間は、背中越しで見えなかったのですが、振り向いて、こっちを見たとき、気持ちの余裕を整理している様子が強く見えたんです。膝をついて、こっちにグローブで合図はしたが、実は『大丈夫、大丈夫』じゃなかった」

 井上は昨年5月6日のルイス・ネリ(メキシコ)戦でも1ラウンドにダウンを喫しているが、「ネリの時より、きつかったんじゃないですか。ネリ戦の時とは、一緒に(パンチが)流れる感じだったが、ダメージ的には、今回はガチンと当たっている」と、真吾トレーナーは深刻に受け止めていた。

 井上は両膝をついて冷静にカウントを8まで聞いてから立ち上がった。

「立ち上がれない選手もいるかもしれない。よくよく考えると打たれ強い。鍛えたフィジカルだけではない。体とメンタル…全部ですよ。すべてが一致しないと、あそこからの挽回はできない」

 残り時間がほとんどなかったことが幸いしてカルデナスの追撃を許さなかった。 井上と真吾トレーナーのインターバルでのやりとりを中継局のマイクが拾っていた。

「大丈夫?」

 真吾トレーナーがそう聞くと「今2ラウンドだよね?」と井上が返した。

「こっちはダメージを知りたくてそう聞いたんですが、パチンと意識が飛んだんじゃないですか。記憶が飛んで(今2ラウンド?)と確認したんじゃないですか」

 記憶が飛ぶほどのダメージを負っていたのだ。

 試合後、カルデナスは、左フックのカウンターが作戦だったことを明かした。

「彼が入ってくるところを狙っていた。パンチを打つ時にガードが下がることがわかっていた。打ち終わりの隙を狙ってカウンターを合わせるという作戦だった」

 だが、真吾トレーナーの受け取り方は違っていた。

「映像を見ると(カルデナスは)下を向いていたし、左から右へ流すときに、とりあえず振っとけみたいに感覚で打ったように見える。それがたまたま的中した。ずっとカウンターを振ってきていたが、あれは狙ったものではなかったと思う」

  ただネリ戦、カルデナス戦と続いてガードの下がったところにカウンターを浴びた。カルデナスが言うように「ガードが下がる」のがモンスターの弱点なのか。

「うーん。漫画の世界じゃないので(笑)。全部パーフェクトとはいかないですよ。まだ2ラウンド目で、気負いもあって、ああいうパンチが来るとは思っていなかったというのもある。ただあのレベルであのステージにくるボクサーは何かを持っています。そこをしっかりと見切るまでは気をつけてやんなきゃいけない」

 そう真吾トレーナーは戒めた。

 

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