
「おまえなんかフェザー級で(一番)弱いわ、と言われた中で…」亀田和毅が前評判を覆す大健闘の0ー2判定負けも世界に届かなかった理由とは…現役続行を宣言「紙一重。ちょっとの工夫」
プロボクシングのIBF世界フェザー級タイトルマッチが24日、大阪市住之江区のインテックス大阪で行われ、挑戦者で同級1位の亀田和毅(33、TMK)が戦前の絶対不利予想を覆す大健闘をしたが0-2判定で王者のアンジェロ・レオ(31、米国)に敗れた。「亀田家最終章」と銘打たれた戦いで負けた後の去就に注目されたが、試合後、現役続行の意向を明かした。なぜ亀田は善戦空しく敗れたのか。

大阪万博会場の隣に位置するインテックス大阪を埋めた数千人のファンから「トモキコール」が起きる。最終ラウンド。亀田の前進が止まらない。ぶんまわした右に王者の顔が横を向いたが、無情のゴングが鳴り響いた。
「接戦だが勝ったと確信していた」
そう考えていた王者にも笑顔はない。
亀田は「後半は向こうは見た目も悪くなっていってたんで。いけたかなと。挑戦者なんで一歩足りなかったってところも」と半信半疑だった。
採点が読み上げられた。カール・ザッピア(豪州)が「115ー113」、ジル・コー(フィリピン)が「116ー112」、そして3人目のリチャード・ブロアン(カナダ)が「114-114」。静寂ののち、「勝者、WBA世界フェザー級チャンピオン…」…。そこには亀田陣営が控室のホワイトボードに書いていた「ニュー(新王者)」の“冠”はなかった。
亀田はレオの勝利を称えた後にリングの四方に両手を合わせて謝罪した。花道を父の史郎トレーナーに寄り添われて去る際、手で目のあたりを押さえて上を向いた。
ブックメーカーのオッズは「2対8」。兄の亀田大毅にさえ、不利の予想をされるほど、前評判は絶対不利。約6年ぶりとなる世界戦で、その予想を覆す大善戦を演じたものの世界には、手が届かなかった。
試合後、インタビュースペースに現れた亀田は、少し左目の上の額あたりが腫れているだけで綺麗な顔をしていた。決定的なクリーンヒットは一発ももらっていない。0-2の採点結果は、潔く受け入れた。
「3人のジャッジがいて、レフェリーがいて、それを(負けに)つけたのを『オレが勝ってたやんけ』と言ってどうなるんですか。そういうの嫌いなんで。負けているならしゃあない。勝っていると思って負けって試合はいっぱいある」
敗因分析もできていた。
「向こうもチャンピオン。大差で勝てる試合でもなかった。評判では絶対負けると言われていた試合でね。作戦はいろいろあったが、前半はできなかった。そこがレオの強さでもあった」
悔しいのはポイントを奪われた1ラウンドから4ラウンドの序盤戦だ。
筆者は亀田はスピードを生かしたアウトボクシングを徹底すると思っていたが、亀田はそれを選択しなかった。史郎トレーナーは「ジャブや。ジャブ」と大声をあげていたが、まったく手が出ず、逆にレオの手数とジャブ、そしてボディショットがジャッジの支持を得た。3人が1ラウンドから3ラウンド、2人は1ラウンドから4ラウンドまですべてにレオ。必ず優劣をつけねばならないラウンドマストシステムゆえの採点で、ひと昔前のように「10-10」が許されるのであれば、1、2ラウンドは、「10-10」の内容だった。もしここで、亀田が得意のアウトボクシングさえしていれば、ジャッジの採点は簡単に逆転していただろう。
なぜそれができなかったのか。亀田は冷静に自己分析した
「前半見過ぎた部分があった。パワー、パンチ力があるのかなと頭に入れ過ぎた。1ラウンドから4ラウンドと中途半端な距離だった。12ラウンドがあるんで、冷静にいこうと思ったことが、今回のこの結果につながったんじゃないか。中盤から後半にかけてラウンド(のポイント)は取れていたんで。そこがもったいない。1ラウンドからいってたら…の終わった話では意味がない。勝負は一回ですから」
レオへの異常な警戒心が邪魔をしたのだ。レオは、昨年8月にルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)を10回に左フックのワンパンチで大の字にのしてベルトを獲得した。その一撃はのちにロペスの脳に障害を与えたほどだった。事前の研究をしすぎたことで、誇大妄想がふくれあがっていた。
だが、4ラウンド×3分の12分間、拳を交えたことで亀田は、レオのパンチがそれほどではないと感じ取った。
「やった感じ、パワー、パンチ力がなかったんで、“これはいけるな”っていうのが中盤。そこの入りが最初から気づけていればよかった。あとの祭りなんですがね」
史郎トレーナーからも「いけるやろ、中途半端な距離はあかんよね」と背中を押された。