
「おまえなんかフェザー級で(一番)弱いわ、と言われた中で…」亀田和毅が前評判を覆す大健闘の0ー2判定負けも世界に届かなかった理由とは…現役続行を宣言「紙一重。ちょっとの工夫」
5ラウンドから上半身を揺すってプレスをかけて接近戦を仕掛けた。左ストレートがヒット。ボディの打ち合いでは亀田が優勢だった。6ラウンドにはロープにつめて、左のボディショットでえぐり、左フックの高速4連打。明らかにレオの様子が、おかしくなった。
「中盤にペースを落として様子を見るのが私のスタイルだ。何かがあったわけじゃない。彼はメキシコのスタイルで向かってくると思っていた。アウトボクシングをしなかったのは想定内だった。きっちりと自分も動いて対応した」
王者は、試合後にそう言い訳した。さらに「和毅にはいいパンチはあったが、効いたパンチはない。ボディ?大きな音がしたのはわかるが効いたわけではない」と強がったが、接近戦を嫌がり、スローダウンしていた。
レオは、本来打撃戦が得意だが、亀田にボディ攻撃と共にクリンチワークで動きを封じ込められ、ロペスを一発で倒した左フックは不発に終わっていた。
亀田は、頭をつけたインファイトで、これでもかとボディショットで痛めつけ、10ラウンドには、右のフックがカウンターとなって炸裂した。
「今回は、中間距離のスピードでいけるかなと思ったが、意外とレオがジャブをついてきた。逆に前にいって潰した方がええ、逆にいけんのとちゃうかなと」
亀田の戦略変更は功を奏した。
父の史郎トレーナーと再コンビを組んでから、超攻撃的スタイルを取り入れてきた。史郎トレーナーは、「引き出しは増えた」と説明していたが、新しい亀田和毅の存在感を王者を苦しめたのである。
だが、11ラウンドにレオの意地で盛り返されてポイントを失い、1ラウンドから、4ラウンドまでの“ツケ”がトータルの採点に響いた。
「そこが世界の壁かもしれない。終わってみていけてたな…世界はこの差なんで」
亀田は猛省した。
挑戦者として一歩を踏み出す勇気を持つまでに時間がかかりすぎたのである。そうさせなかったのが、王者のボクシングだったとも言える。
両者共に決定的なダメージを相手に与えることができなかった。ぐらつかせるシーンもない、ぺースの奪い合いが勝敗の趨勢を握っていた。いわば亀田の展開。それだけに悔しさが増す。ただそれを冷静に振り返ることのできる点が亀田のクレバーさ。33歳にしてまだ可能性を感じさせる部分だ。
今回の試合は「亀田家最終章」と銘打たれた。
前日計量の後に史郎トレーナーは「最後の戦いなのよ。オレらにしたら。和毅もこれで出されへんかったら最後なのよ」と負けたら引退を暗に示唆した。
だが、亀田は限界を感じてはいなかった。
「出しきった。負けたけど、世界で一番強いと言われている選手に(あと)1歩のところまでいけたわけ。自信にはなる。パンチはレオも効いていたと思う。パワーがあると言うてたんでね。そこは自信がついた、もうちょっとでいける」
残ったのは世界へ近づいた手応え。
リング上でマイクを向けられたレオは「亀田は強かった。スピードだけでなく思ったよりパワーもあった」とコメントしていた。