
「井上尚弥戦に万全の準備が整ったとは言えない」9.14名古屋で激突するWBA暫定王者アフマダリエフが“モンスター前哨戦”を8回TKOでクリアも残した不安…左拳を痛めた疑念も
米老舗雑誌「ザ・リング」が「3ラウンドに左を打ち込んだ際、アフマダリエフは左手を痛めたようにも見え、3、4ラウンドの間に手を振って様子をうかがう仕草を見せた」と指摘。米専門サイト「ボクシングニュース24/7」も「やや心配なことにアフマダリエフは3ラウンドで左手を痛めたように見え、第4ラウンドで手をふっていた。全体として良い調整試合の勝利だった。ただし、手の怪我の可能性を除けばだ」と報じた。
アフマダリエフは、WBA&IBF世界同級王者時代の2022年6月にWBA同級1位ロニー・リオス(米国)と対戦し、12回TKO勝ちを収めV3に成功しているが、この試合で左拳を骨折している。その古傷が、この試合で再発したのか、その影響でフィニッシュまで亀田よりも3ラウンドも多くかかったのか、わからない。だが、この日のような出来では、モンスターにはとうていかなわない。
ただ前出の「ボクシングニュース24/7」が「一部の人々はアフマダリエフが井上にとって最も危険な相手だと考えている」と伝えるなど、このWBA世界暫定王者が最強の挑戦者としてのポテンシャルを持っていることだけは間違いない。
元リオ五輪銅メダリスト。キャリアでの黒星は2023年3月にマーロン・タパレス(フィリピン)に1-2の僅差判定で敗れてWBA&IBFのベルトを失った1試合だけだ。
ハーン氏は来日した際に「9月は簡単な試合にならない。MJ(アフマダリエフ)が勝つと信じている。今までの相手のようにはならない」と豪語した。
その根拠として2つの理由をまくしたてた。
「MJのパンチは(ラモン・)カルデナスよりも強い。(ルイス・)ネリよりもテクニックはベター。この階級で言えば、今まで戦った誰より頭もいい。ボクシングスキルも比べものにならない」
そして「プロモーターとして、3度も逃げられたと感じている。だからだ」とWBAが指令した指名試合を井上が受けてこなかったことを執拗にほじくり返した。
井上は5月4日に米ラスベガスでWBA1位のラモン・カルデナス(米国)に8回TKO勝利した試合で2回にダウンを奪われたが、アフマダリエフのトレーナーは、カルデナスと同じジョエル・ディアス氏。あのマニー・パッキャオ(フィリピン)に土をつけた元2階級制覇王者のティモシー・ブラッドリー・ジュニア(米国)を育てたことで知られる名トレーナーだ。
ディアス氏は、カルデナスにブロックを固めたまま、時にはプレスをかけてカウンターのフックを狙う作戦を徹底させて、モンスターを苦戦させた。アフマダリエフは、カルデナスと違ってサウスポーだが、ずんぐりむっくりの体形で、フィジカルはカルデナスと同様に強くパンチ力と回転力があるため、同じ作戦でくる可能性がある。そこも警戒すべき点。井上陣営も対策を練るが、アフマダリエフの左拳に問題がなく万全でくれば、緊張感の漂う王座統一戦となるだろう。