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東京ドーム内の壁には引退試合の写真と在りし日の長嶋さんのプレー風景が
東京ドーム内の壁には引退試合の写真と在りし日の長嶋さんのプレー風景が

あの日、長嶋茂雄さんは声を震わせて怒った…「それは別問題の議論です」…2000年「夢のON対決」となった日本シリーズ前の取材で金権野球への批判と巨人の横暴論について質問が飛び

 玉木氏が、ドラフトの逆指名やFA制度の導入に、巨人が積極的に動いたことを説明して、長嶋さんの同意を求め、「巨人だけに選手が集まるシステムがプロ野球全体の発展を阻害し、このままでは日本野球が衰退する危険があるのでは?」と聞くと、とたんに表情を変え、声を震わせた。
「その議論は、今回の巨人の優勝に直接つながるトークじゃありません。別問題の議論だと思うんですよ」と返して明らかに怒りをにじませたのだ。
「この長い間のプロ野球の歴史、職業野球が昭和11年からスタートして今日まで半世紀以上の歴史をたどってきている中でその節々のルールも制度も変わってきているでしょう」
 長嶋氏は球団運営に直接タッチはしていなかったが、その反論には猛烈な巨人愛が見え隠れてしていた。
 だが、ここでインタビューは打ち切りとはならなかった。むしろこの「別問題」の話題が、野球界への未来への話へと切り替わっていく。25年前に、長嶋さんは21世紀の野球についてこう熱く語り始めたのだ。
「ファンがね。プレーヤー、チームを育成する土台が日本にはあるわけです。ファンというのは国民ですよね。日本国、国というものが21世紀にどうなるのか。それを無視できないわけです。我々の時代も昭和33年の前半から(高度経済成長が)始まりました。日本が世界に追いつけ追い越せで、商社マンらが、日本のために労力を惜しまず働く。その流れの中に我々プロ野球も乗っていったわけじゃないですか。日本の問題に視点をとらえることが大切じゃないでしょうか。高齢化が浮き彫りになり、少子化問題がある。私は6人家族ですが、野球界に身を投じないお子さんが増える。スポーツの各種目が減ってくる。プロ野球の未来を語るには、むしろ日本という国が21世紀に向けてどうなるのか。そういう問題になるんじゃないですか」
 長嶋さんが25年前に問いかけた問題が、今日本をそして野球界を襲っている。社会では令和の米騒動が起き、野球界にメジャーリーグでMVPを3度獲得する大谷翔平が登場することは予期できなかったのかもしれないが、一方で子供達の野球チームは減少している。あの日、宮崎で怒りに声を震わせた“ミスタープロ野球”は、日本と野球界のもっと先を見据えていたのかもしれない。その最初にして最後の「ON対決」は長嶋巨人の4勝2敗で幕を閉じている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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