
超本気!井上尚弥に負けたフルトンを教訓に6.19佐々木戦の14日前に来日したWBOウエルター級王者ノーマン…自慢した恐怖の左拳の“KOダコ”と手術跡の意味
プロボクシングのWBO世界ウエルター級王者のブライアン・ノーマン・ジュニア(24、米国)が5日、羽田空港着のデルタ機で米国アトランタから来日した。6月19日に大田区総合体育館で同級2位の佐々木尽(23、八王子中屋)の挑戦を受ける王者は「この努力で獲得したベルトを手放してこの国を去るつもりはない」と言い左拳の“KOダコ”と左右に残った手術後を示した。また14日前に来日した理由は、現WBC世界フェザー級王者のスティーブン・フルトン(29、米国)がWBC&WBO世界スーパーバンタム級タイトル現同級4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)に奪われた試合の調整から学んだからだという。油断なく、万全の備えをしてきた王者は、佐々木にとって恐るべき相手となりそうだ。
「誇張ではなく、人生をかけてこの階級に挑み王者になった」
WBO世界ウエルター級王者は、父でトレーナーのノーマン・シニアと共に黒のTシャツにスウェットの下という軽装で現れた。時計はスマートウォッチ。元5階級制覇王者のフロイド・メイウエザー・ジュニア(米国)のようなジャラジャラとした高価な貴金属類はつけていなかった。まだ防衛は一度。身長は1m72で上背もない。王者のオーラはなく、研ぎ澄まされたアスリートのようだった。
アトランタからの長いフライトに疲れは見えたが、羽田空港の人気のない場所で報道陣の囲み取材に応じたノーマンは、「2週間前。ゆとりをもって来日した。勝ちにきた。ここから調整する」と、静かに第1声。
代表インタビューをしたレミノの人間が着いたばかりで空港も出ていないノーマンに「日本の印象は?」と、馬鹿な質問を投げかけたが、「何言ってんだ?来週また来るよ」と怒らず、ジョークで返した。
故郷のアトランタだけではく、元6階級制覇王者のオスカー・デラホーヤ(米国)ら歴代の名王者がキャンプを張ってきたことで知られる伝説のカリフォルニア州のビッグベアでも2週間のトレーニングを敢行してきた。
まだ現役でリングに上がっている父のノーマン・シニアは「前回の試合ではダメージも最小限だったし、継続してトレーニングを6、7週間続けてきた。体もシャープに仕上がり素晴らしい準備をしている」と説明した。自身は、トレーニングで左手の二頭筋を断裂する怪我を負い、ミットを持てなかったそうだが、もう1人トレーナーを帯同させてきた。
実は、14日前の来日には、2023年に日本で井上に9回に倒されたフルトンの教訓がある。来日直前に米専門サイト「Fight HubTV」のインタビューに答えたノーマンは、「クールボーイ、ステフ(フルトン)が日本で負けたのには、調整の問題もあったと聞いた。歴史に学んでいる」と明かしていた。
フルトンの来日は14日前。ノーマンはフルトンが試合直前に来日したと勘違いしているようだったが、そのフルトンと同じく早く来日したのには、時差や環境の違いに適応する時間が必要だとの陣営の慎重な狙いがある。フルトンが井上に敗れたのは番狂わせでもなかったが、彼らからすれば、日本というアウエーの地で王者が敗れた例は無視できない。
今回が世界初挑戦で、世界のトップランカーとの対戦経験のない佐々木との対戦にも油断などない。むしろ本気も本気。
「契約をしっかりと終わらせる。いい試合を見せるためにここに来た。ここ来た理由をみせたい。誇張ではなく、人生をかけて、この階級に挑み王者になった。簡単にこのベルトを手放す気はない。誇りに思っている」
淡々と決意を表明した。