
「那須川天心はプロの壁にぶつかっている」世界前哨戦でWBA世界6位を3-0シャットアウトもKO決着できずに猛反省…11月にも世界挑戦へ
天心はジャブで主導権を握ろうとした。左のボディブローも効果的だった。6ラウンドにはトリッキーなカエル飛びからの左アッパーで会場を沸かせた。サイドへの頻繁なポジションチェンジの試みも悪くはなかった。この手の相手への鉄則は、ボディ攻撃で足を止め、プレスをかけて四隅に追い込んで逃がさないこと。だが、ボディ攻撃のダメージの蓄積もプレスも中途半端。8ラウンドに左ストレートを打ち込み強引に勝負に出たが、まだドミニカの怪人は元気で「パンチも生きていた」ためをフィニッシュに持ち込むことができず、逆に攻撃も雑になった。
「ボディも上も、ガードが高い分、状況判断が遅れた。どうしようと迷った。いろんなことを考えすぎて、小さくなりすぎてんじゃないかち、練習でもたまにある。練習では相手を動かしながら途中でつかむが、途中でつかむのではなく、いきなりはまるようにやらないといけない」
恒例の公開ガチスパーでは磨かれたインファイトを披露した。元WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニー(豪州)戦で浮き彫りになった「倒し切れない」という課題に取り組んだものだった。だが、それを実戦で出せなかった。
「練習でできて試合でできないのならそれが実力」
天心は素直にそう言う。
元世界2階級制覇王者の粟生トレーナーは、「倒せるチャンスはたくさんあったが、いなすのが上手い、やわらかい選手で、そこを捉えきれなかった。ここから強いパンチを打つ練習をしていこうかなと思う」と補足した。
来年のビッグマッチが期待される武居がPrime Video の配信ゲストで招かれていた。
「天心選手のスピードだったり、技術だったり(は見えた)。サンティリャン選手がやりづらい感じだったので、良かったんじゃないかなと。最後の打ち合いも面白かったし、いい試合だった。パンチをもらわないところは相変わらずすごいなと。近い距離の左ボディは厄介。本当にレベルが上がってますよね」
そう評価した。5月28日のV2戦で1ラウンドTKO勝利している武居は「いつ戦ってもいいように、研究しながら観戦した。強い選手。自分は天心選手と戦うためにもボクシング界に来たので、やりたいと思う」と来年のビッグマッチを熱望した。
大橋秀行会長は、その倒しきれない点を「プロの壁にぶつかっている」と厳しく指摘したものの「最終回のプロ意識がすごい。求められるものがわかっているというスター性、華がある。普通は(求められているものが)わかんなくて、あのまま終わる。でも倒しに行くところにスター性がある」と、ボクサーとしての素質を称えた。