
中谷潤人が井上尚弥戦に備えてWBC&IBFバンタム級王座を返上なら空位争いに那須川天心と井上拓真に参戦資格あり
王座決定戦での対戦候補としては2位が2階級制覇王者の“レジェンド”のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)で、3位が井上拓真、4位が比嘉、5位にアレハンドロ・ゴンサレス(メキシコ)となっている。このままエストラーダが2位をキープすれば、天心はいきなりローマン・ゴンサレス(ニカラグア)と3度の激戦を繰り広げた“レジェント”に挑むこととなり、ファンの大注目を集めるだろう。しかし、王座決定戦は、必ずしも1、2位で行われるわけではない。興行の絡みがあり、その組み合わせが成立しないケースの方がむしろ多い。
WBC世界スーパーフライ級王者のジェシー“バム”ロドリゲス(米国)に倒され、バンタム級に上げてきた35歳のエストラーダは、高額ファイトマネーを要求することで知られる。王者ならまだしも王座決定戦でそのリスクを負う義務が興行をプロモートする方向の帝拳にはない。しかも中谷の対戦相手としてオファーをして断られた過去もある。よほどエストラーダ陣営が歩み寄ってこない限り天心―エストラーダ戦の実現は極めて難しい。
そうなると井上拓真が、次の候補となるが、実は井上拓真はIBFの王座決定戦に抜擢される可能性が高いのだ。IBFは、1位、2位が空位だが、3位のホセ・サラス・レイエス(メキシコ)が指名挑戦権を持っていて、西田は、中谷との統一戦を優先させるため待ち料を払って指名試合を延期していた。王座決定戦となると、レイエスの出場が最優先され、対戦候補の一番手は4位の天心となるが、彼はWBCに向かうと考えられているため、5位の井上拓真が権利を得ることになるのだ。
井上拓真には、当初、WBAの正規王者となったバルガスへの挑戦の話があったが、昨年10月に王座から陥落した堤との世界戦で負った怪我が完治していなかったため見送った。3月31日の年間表彰式で「堤にリベンジしたい」と、再戦を熱望していたが、前述したように、バルガスー比嘉の勝者と、休養王者の堤が王座統一戦を戦わねばならないため、来年まで待たねばならない。
それではブランク期間が長すぎるため、IBFの王座決定戦のオファーが舞い込めば、そちらに切り替える可能性が高い。
またWBCの天心の相手候補に話を戻すと、4位は比嘉で、こちらはバルガスに挑戦するため可能性はなく、5位のゴンサレスは、天心が2月に元WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニー(豪州)と対戦する際に招いていた元スパーリングパートナー。WBCバンタム級シルバー王者で互いに手の内を知っているだけにやりにくさはあるだろう。
そもそも中谷がまだ2つのベルトを返上していない今の段階で、すべては予想、展望の域を出ない話ではある。しかし、バンタム級の世界戦線に天心と井上拓真が加わって王者になれば、中谷がいなくなっても、さらに盛り上がることは間違いない。
そういう展開を予想してか、有明コロシアムで天心の世界前哨戦と、中谷と西田の統一戦をリングサイドで観戦した大橋秀行会長は、「天心―武居も含めて、今後のバンタム級はいろんな組み合わせが考えられるよね。ワクワクしますよ」という話をしていた。バンタム級の物語が動くのは秋。日本ボクシング界にとって実りの秋となりそうである。