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“ネクストモンスター”中谷潤人が聖地のラスベガスでの衝撃KOで2階級制覇に成功した(写真・AP/アフロ)
“ネクストモンスター”中谷潤人が聖地のラスベガスでの衝撃KOで2階級制覇に成功した(写真・AP/アフロ)

なぜ“ネクストモンスター”中谷潤人は全米メディアの称賛を受けるラスベガスの衝撃KO勝利で2階級制覇に成功したのか

 プロボクシングのWBO世界スーパーフライ級の王座決定戦が20日(日本時間21日)、米国ラスベガスのMGMグランドで行われ、元WBO世界フライ級王者で同級1位の中谷潤人(25、M・T)が、前WBA世界スーパーフライ級王者で同級2位のアンドリュー・モロニー(32、豪州)を12回2分42秒にKOで下して2階級制覇に成功した。元4階級制覇王者の井岡一翔(34、志成)が2月に返上したベルトを衝撃のKOで奪取した中谷は、「統一戦をやりたい。相手はチャンピオンなら誰でも」と、次なる目標を語った。

 「練習してきたパンチ」

 

 “聖地”ラスベガスで”ネクストモンスター”が強烈なインパクトを与えた。
2ラウンド、11ラウンドと、2度ダウンを喫しながらも、立ち上がってきた恐ろしいほどタフなモロニーを相手に、判定決着もやむなしと思われた最終ラウンド。
 右のリードで誘いだしたところに中谷が頭を右へ極端に下げ、相手の視線を動かしたところにハンマーのようにオーバーハンドの左フックをぶん回す。死角から飛んできたカウンターの一撃を顔面に食らったマロニーは背中からドタンと倒れてキャンバスで仰向けになった。レフェリーはカウントも数えずに即座にKOを宣言した。
「相手がくるというタイミングで出す練習してきたパンチ。スムーズに出た。感覚もなく倒した」
 急所を打ち抜くパンチは手応えがないと多くのチャンピオンが言うが、中谷も同じ感覚だったという。
 ライト級の4団体統一王者のデビン・ヘイニー(米国)と、五輪連覇で元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が激突した全世界注目のビッグマッチのアンダーカード。そのリングで衝撃KOでの2階級制覇をやってのけた中谷は、右手を上げてリングを半周。観客席に家族を見つけると手を振った。
「大きい舞台を用意してもらった。楽しかったし、気持ちよかった」
 日米をオンラインでつないだ取材に応じた中谷は、獲ったばかりのベルトを目の前に置いていた。バッティングで流血。左目のあたりもカットしたが、腫れもなく「ラスベガスのリングは華やかで、いいパンチが当たるとあ歓声も聞こえてきて気持ちよかった」と爽やかに笑った。
 スタートから1m70の恵まれた体格を生かしたスピードと距離で主導権を握り、2ラウンドにインサイドからのアッパーで一度目のダウンを奪った。だが、3ラウンドにバッティングでカット。5ラウンドからは、セコンドの「オージーフットボールのように体をぶつけろ!」の指示で、肩からぶつかってくるような超接近戦を挑んできたモロニ―に距離を潰されて手数で圧倒された。中谷は打ち終わりにショートフックを狙われた。
 しかし、元王者の“豪州魂”を剥きだしにした強い気持ちも、密着してくる相手の作戦も「すべて頭に入っていた」という。
「どこでもやってやるという気持ちでいた。接近戦でも、遠い距離でも、集中してパンチを当てていった」
 モロニーの双子の兄のジェイソン・モロニ―は1週間前に、バンタム級の4団体統一王者だった井上尚弥(大橋)が返上したWBO世界バンタム級のベルトを獲得していた。その勢いと強い気持ちで、前に出てくることを中谷は想定していた。
 セコンドのルディ・エルナンデストレーナーからは、「距離だ。強いジャブを打ち込め」の指示が飛ぶ。
 中谷は、ステップワークと右の強くて速いジャブを何発も打ち込んで前進を止め、ロープに押し込められるとアッパーで反撃した。
「8、9ラウンドくらいから、疲労とダメージの蓄積がわかった。体力と覇気がなくなってきてタイミングで倒せると感じた」

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