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阪神の藤川監督が鬼になった(資料写真:Imagn/ロイター/アフロ)
阪神の藤川監督が鬼になった(資料写真:Imagn/ロイター/アフロ)

「先を見据えた競争意識と常勝軍団への決意」なぜ阪神の藤川監督は走塁ミスを犯した豊田寛を5回で“懲罰交代”させたのか…その狙いと波及効果とは?

 阪神が12日、甲子園でのヤクルト戦に5-2で逆転勝利し、両リーグを通じて50勝に一番乗りを果たした。阪神の50勝一番乗りは2021年以来、4年ぶりだ。その中で藤川球児監督(44)は4回に走塁ミスを犯した豊田寛(28)をその直後に島田海吏(29)に懲罰交代させるという厳しさを見せた。鬼になった藤川監督の狙いは?そしてそれがチームにもたらす影響とは?

 「プロとしての壁を乗り越えられるのか」の問いかけ

 大型連勝の後で怖いのは反動の連敗。前日のゲームで連勝が11でストップしていた阪神だがその反動を受けることなく得意のパターンで逆転勝利を収めた。4回に突如、先発デュプランティエの制球が甘くなり、オスナの二塁打、太田の2点タイムリーなど先制点を許すがその裏、ふた回り目に入った45歳のベテラン左腕、石川を攻略した。
 無死満塁から大山のライトへふらっと上がった打球は突っ込んできた太田が捕球できずに同点の2点タイムリーとなった。
 さらに「大山さんが2点取ってくれたっていうことで気持ち的にも楽だった」という小幡が「あっち(右方向)に転がせばゲッツー崩れでも(点が)入る」と意識して引っ張った打球がライト前へ抜けて勝ち越し。8回にも二死一塁から小幡のタイムリー二塁打、坂本のタイムリー三塁打で2点を追加。8回石井、9回岩崎の必勝リレーでヤクルトの反撃を許さずに12球団最速の50勝目を手にした。
「まあまあ、いい形ができたんじゃないですか。昨日のゲームから連勝が止まってチームとしての揺れ動きがゲームの中に出ていたと思いますね。選手が誰であるとかではなく、連勝が止まって、もう一度勝つというところの揺れ動き。それが2(失)点とその裏の3(得)点。まだそういうものがゲームで生きていて8回に2点を取って石井が(8回を無失点に)抑えて一気にグッとこっちに(流れを)持ってきたゲームでしたね」
 試合後に中継テレビのインタビューに応じた藤川監督も満足気だった。
 この勝ちゲームの中で藤川監督は、先を見据えた厳しい采配をした。4回に走塁でボーンヘッドを犯した豊田を島田に懲罰交代させたのだ。
 阪神は4回に小幡のタイムリーで一気にゲームをひっくり返し、さらに無死一、二塁と続くチャンスに坂本にバントで送らせて、一死二、三塁の追加点機を作った。「8番・左翼」でスタメン出場していた豊田はショート正面のゴロ。前進守備を敷いていたヤクルトはバックホーム。スタートを切っていた三塁走者の大山は、三本間に挟まれ、三塁ベースの手前でアウトになった。その間に小幡は三塁まで進塁できていたが、打者走者の豊田が二塁を狙う暴走をし、大山にタッチした山野辺から転送されて、余裕でアウトになったのである。藤川監督は5回の守りから豊田に代えて島田をレフトで起用した。
 リードした展開で、早いイニングからでも守備を固める采配は、藤川監督の特徴ではある。その狙いか、はたまた懲罰かは不明だったが、試合後、藤川監督は包み隠さず懲罰交代だったことを明かした。
「それをチャンスと思うのか、このタイガースでプレーすることに対してのプレーヤーとして壁がいくつかあると思いますね。技術以外の部分で。ここから先、特にプロフェッショナルな部分が求められるところで壁にぶち当たって跳ね返されるのか、乗り越えられるのか。時間が非常にかかるし、そのチャンスも必要。だけどそんなに簡単ではない、というようなシーンでした」
 かいつまんで言えば、ここまで10試合にスタメン抜擢されている4年目の豊田が、今後さらに出場機会を増やしてレギュラーを獲得していくために「打つ、守る」の技術以外の「状況判断」という最低限のスキルを身につける必要があり、それができない選手に藤川阪神ではチャンスがないという厳しい競争の原理をつきつけたのである。

 

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