本当に阪神は広島にCSで“下剋上”される可能性があるのか…広島OB達川光男氏の「下剋上されますよ」連発のテレビ解説が波紋

　広島が9月30日、マツダスタジアムで行われた阪神戦に2－1で勝利し、本拠地でのクライマックスシリーズのファーストステージ開催に王手をかけた。3位の横浜DeNAもヤクルトに逆転勝ちを収めたが、今日1日の阪神戦に広島が勝利か、引き分けで2位が確定する。SNS上で波紋を広げたのが、CS放送のJスポーツで解説を務めた元広島監督で阪神でのコーチ経験もある達川光男氏（68）の発言。番組中に「この調子だと阪神は広島に下剋上されますよ」と何度も繰り返して阪神ファンの怒りを買った。そもそも広島がファーストステージを勝ち抜けるかどうかもわからないのだが…。本当に阪神は広島に“下剋上”を許す可能性はあるのか？

　「性根を入れて調子を上げないと100％足元をすくわれますよ」

　カープの“守護神”栗林の投じたインハイのカットボールにサトテルのバットが粉砕された。阪神が1点を追う9回二死一塁。詰まった打球は、栗林の頭上を越えたが、懸命にカバーをした矢野が素手で取って鮮やかなランニングスローを決めゲームセット。その場に座り込んで矢野は渾身のガッツポーズをした。新井監督は、守備固めで入れた矢野のスーパープレーを絶賛した。
「最後のプレーは、ヒヤっとしたが矢野が素晴らしいプレーをした。なんとか、ここでクライマックスをやるんだという気持ちが凝縮されたプレーだったと思う」
　3位の横浜DeNAに1ゲーム差に迫られ、CSを本拠地で開催するためには、絶対に負けられない試合だった。新井監督がインタビューを終えた直後に神宮で横浜DeNAがソトの2ランでヤクルトに勝ち越した。
　すでに優勝を決めている阪神が“脇役”に回ったゲームだったが、CSでテレビ解説をしていた達川氏は、打った瞬間に走らなかった佐藤の走塁を「最初から走っていたら内野安打ですよ、怠慢プレーですよ」とぶった斬った。
「阪神は相当、性根を入れてファイナルステージに向けて調子を上げないと100％足元をすくわれますよ」
　達川氏は、2時間49分の試合の中で何度となく「阪神は広島に下剋上されますよ」と繰り返した。
「タイガースにかなりスキがあるので（広島が）第1ステージを勝ちあげれば、ズバリ下剋上があると思いますよ。今の“ゆるゆる”のままでは（チームを）引き締めるのは大変です」
　達川氏は、5回を無失点に抑えたルーキー門別を「来年はまだ通用しない」を厳しく批評し、先制点を許した2番手の石井を「CSでは使えない」とまで断言、會澤のセンター前ヒットを楽々セーフにした島田の守備位置を指摘し「優勝が決まって首脳陣も仕事をしていない」とバッサリ。さらに8回に代打で三塁線を破るヒットを放った森下を「フリー打撃もひどかった。タイミングもあっていない」と酷評し、何の問題もない中継ぎ陣を「のきなみ調子を落としている」と論じるなど、あまりにも広島寄りに偏向した解説にSNS上では虎党からの怒りの声が爆発。広島ファンからも「聞いていられなかった」との意見が出るほどの波紋を広げた。
　広島弁での軽妙トークが人気の達川氏は元広島の名キャッチャーで監督まで務めた人物。その指導能力を買われてダイエー、中日、ソフトバンクのユニホームも着た。阪神でも故・星野仙一氏に誘われてバッテリーコーチを務めて2003年の優勝に貢献。当時、内野守備コーチだった岡田監督とも同じ釜の飯を食った。ジョークを交えた本音トークが持ち味だが、この日は、度が過ぎた。
　ある阪神OBは「地元のチーム寄りの解説になるのは、当然だし、仕方がないこと。ただ全国放送は、広島ファンだけが見ているわけではないので、もう少し発言に配慮は必要だったと思う。いつもの達川氏らしいユーモアーにも聞こえなかった。あそこまで下剋上発言を繰り返すのは聞くに耐えなかった」と顔をしかめた。
　阪神は、横浜から広島への移動日ゲームのため、疲労とケガのリスクを考えて近本、ノイジー、木浪、坂本らの主力をスタメンから外した。広島と横浜DeNAが1ゲーム差で2位争いをしていたため岡田監督は「難しいわな。どっちかに手を抜くようになってもなあ。ちょっと考えんとあかんなあ」と思い悩んでいた。だが、フレッシュオールスターの登板時から、その素質に目をつけていたルーキー左腕に来季以降を見据えて先発チャンスを与えて、当初のプラン通りにファイナルステージへ向けての調整を優先させた。