
なぜ横浜DeNAは中日時代に“致命的欠陥”を露呈していたビシエドを獲得したのか…「FA取得で日本選手扱い」「守備力も含めた総合的な活躍に期待」「ハマスタの相性」
しかし、同時に大きな不安も残ると言わざるを得ない。
昨季まで3年間にわたって中日を率いた立浪前監督は、ビシエドに関して「インコースのストレートが打てない」と致命的な欠点を指摘していた。上体が突っ込む打撃フォームを修正できなかったためインコースのストレートに対応できず、相手投手がコントロールミスでもしない限り、距離が取れずに打球が詰まる悪循環に陥っていた。
2022年には打率.294、14本塁打、63打点をマークしていたが、2023年は一転して打率.244、6本塁打、23打点に急落。開幕を二軍で迎えた昨季は、一軍戦で出場わずか15試合、打率.209、1本塁打、2打点と低迷した。
6月中旬以降は再び二軍へ落ち、そのままシーズンを終えたビシエドを待っていたのは戦力外通告。日本国内で他球団からのオファーを待ちながらかなわなかったビシエドは加齢による衰えを否定した上で、メキシコへ新天地を求めた理由をこう語っている。
「自分はまだまだやれると証明したいと思っていたし、メキシコでの活躍を介して日本に戻ってくることを目標に頑張っていた。つい最近まで、本当に1週間くらい前まではメキシコでプレーしていたので状態はすごくいい。メキシコではスイングの状態もすごくよかったですし、36歳になりましたけれども衰えというものはまったく感じていないですし、以前と変わらずにプレーできると思っている。ただ、来日したばかりなので、まずは時差ぼけを解消させていきたい」
ドスラレドス・オウルズでは38試合に出場して、打率.276、8本塁打、31打点をマークした。復調を示す数字に加えて、昨季の大半を過ごした二軍のウエスタン・リーグでマークした打率.300もビシエドを強気にさせる。
「そこ(昨季の一軍での不振)はファンの方々に心配してもらう必要がないというか、昨季はほとんどファームで過ごしていましたけど、それでもしっかりと自分の力を出せていた。それを今年もしっかりとやっていければと思っている」
さらにチームの本拠地が広大なバンテリンドームから、来日から3年連続で打率3割以上をマークした横浜スタジアムに変わることもビシエドを饒舌にさせた。
「バンテリンドームはすごく広くて、外野まで遠いと感じましたけど、それに比べると横浜スタジアムはバッターにとってすごく有利な球場だと思います」
高地のメキシコでは打球が飛びやすい特性があり、言うまでもなく二軍の投手のレベルは一軍より下がる。それでも、フォード、元阪神の藤浪晋太郎(31)に続く緊急補強となったビシエドは「日本の投手とは、ほとんど対戦した経験があるので」と自信をみなぎらせ、中日時代と同じ「66番」を背負いながら、日本での再デビューを待ちわびている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)