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レッドブル角田裕毅のサマーブレイク中の解雇は回避された(写真・Getty Images / Red Bull Content Pool)
レッドブル角田裕毅のサマーブレイク中の解雇は回避された(写真・Getty Images / Red Bull Content Pool)

「ドライバーの評価で大切なのはポイントだけではない。人間性だ」大不振の角田裕毅をレッドブルが途中解雇しないこれだけの理由…フェルスタッペンのペナルティ問題と必要なホンダの合意

 現在のF1のレギュレーションではチームが1シーズンに登録できるドライバー数は4人までとなっており、すでに3人の枠を使用しているレッドブルがサマーブレイク後に角田に代えてハジャーを起用すると、4人の枠を使い切ってしまう。
 そういう状況で、フェルスタッペンが出場停止に追い込まれるような事態となると、交代は4人の中からしか行えないため、自動的に選ばれるのはローソンか角田となる。それはレッドブルとしてはできるだけ避けたい。
 レッドブル昇格後、入賞3回、Q3進出も3回にとどまっている角田をレッドブルが起用し続けるということは 裏を返せば、レッドブルがそれだけ角田に期待を寄せている証とも言える。なぜなら、レッドブルの技術陣はいま、自分たちが開発したマシンがセットアップのウインドウがなぜ狭く、扱いづらくなってしまったのか、完全には把握できていないからだ。
 フェルスタッペンがこのマシンで2勝し、ポールポジションも4回獲得しているのは、マシンが優れているからではなく、フェルスタッペンの超人的なドライビングスキルによるものだったということに、レッドブルもようやく気がついた。
 そこでレッドブルはもう1台のマシンに乗る角田の評価に注目している。マシンのどこに問題があり、どうすれば良い方向に進むのか。フェルスタッペン以外のドライバーの助言をいまレッドブルは必要としている。
 25日に開幕する次戦ベルギーGPには角田にも最新のフロアが投入されると、テクニカルディレクターのピエール・ワシェは語っている。ただし、1つのアップデートでパフォーマンスが大きく変わるほど、現在のF1は単純ではない。おそらく後半戦も角田が厳しい戦いを強いられる可能性は高い。
 だが、たとえ思うような結果が出せなくても、レッドブルやライバルチームの首脳陣が見ているのは、成績だけではないということも忘れないでほしい。
 レッドブルでセバスチャン・ベッテルとともにチャンピオンを4度獲得した名エンジニアで「ロッキー」の愛称で親しまれたギヨーム・ロケリンは、こう言う。
「ドライバーの評価で最も大切なのは、ポイントだけではない。そのドライバーの人間性だ」
 人間の真の価値は、逆境に陥ったときにはじめて明確に現れると言われている。不振から脱却できなくとも、その状況に負けない強い志を持ち続ければ、必ず報われる時が来る。
(文責・尾張正博/モータージャーナリスト)

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