
「いい修行をさせてもらっている」それほど阪神の監督にかかるプレッシャーは特別なものなのか…首位独走の藤川監督が球宴で“旧友”松坂氏に明かした苦しい胸中
そして注目の発言は、気の置けない友人である松坂氏が「阪神の監督は他のチームよりも難しいイメージ。そう僕が勝手に思っているんですが、どうですか?」と投げかけたことで、思わず口をついたものだった。
「いい修行をさせてもらっている。人生においていい経験と思ってやらせてもらっている」
笑っていたが、これが本音だろう。
阪神の監督は「修行」と割り切らないと乗り越えられないほど過酷だと明かしたのだ。スポーツ各紙の報道によると、グラウンドで2人で雑談した阪神の先輩にあたる日ハムの新庄監督も、その表情に「疲れている」と感じたという。
甲子園でのほぼ全試合が満員となるファンの期待に応えねばならないというストレスに他チームとは比べものにならないくらいのマスコミの数。采配のミス、失言…そのすべてが記事になり、批判の対象となる。広島の新井監督と試合前のメンバー交換の際に目を合わさなかったことが大きく取り上げられ、思わず「それが質問に上がること自体が会見としてはふさわしくないんじゃないか」と、会見の意義を取り違えているような問題発言を残したこともあった。
交流戦では7連敗。株主総会では「リーダーの資質に欠ける」とまで指摘された。
勝てば天国、負ければ地獄。グラウンドだけではなく、そんな世間の風とも戦わねばならない。
2003年にチームを優勝に導いた“闘将”故・星野仙一氏は、あまりものストレスに血圧が200を超えて、試合中に意識を失い、ロッカーで横になった。2023年に優勝した現オーナー付顧問の岡田彰布氏は、眠れず「夜中の決まった時間に2度目が覚める」という話をしていた。珍しく熟睡した際には陽子夫人が「死んでいるのかと思った」と思うほどのストレスで、2年目の終盤には体を壊した。
肉体を蝕むほどの重圧は歴代の阪神の監督にしかわからない過酷なものだろう。
だからこそ藤川監督はそのプレッシャーとの向き合い方を「修行」と捉えたのかもしれない。「修行僧」の境地でなければメンタルを維持することは難しいのだ。
その発言を受けて松坂氏がこうフォローした。
「結果が出なければ厳しいファンが待っている。監督、選手もそれに応えたいということですかね」
阪神特有のプレッシャーがかかるのは監督だけではない。
「選手の胆力というか…すごく強いですね」
藤川監督は、ファンやメディアに直接的に叩かれることになる選手達の強靭な精神力を称えた。
オールスターが終われば26日から後半戦がスタートする。2位の横浜DeNAとは9.5差があるが、今度は追われるものの苦しみ、そしてゴールテープを切る寸前の生みの苦しみと戦わねばならない。
監督1年目。藤川監督の「修行」に終わりはない。