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僅差判定負けの拳四朗は悔し泣き(写真・山口裕朗)
僅差判定負けの拳四朗は悔し泣き(写真・山口裕朗)

なぜWBC&WBA王者の拳四朗はダウンを奪うも1-2判定で王座転落したのか…12月サウジでIBF世界Sフライ級王座への3階級挑戦計画が白紙…父の寺地会長は「リベンジが一番だがまずは休養」

 プロボクシングのWBC&WBA世界フライ級王者の寺地拳四朗(33、BMB)が30日、横浜BUNTAIで、WBC2位、WBA3位のリカルド・サンドバル(26、米国)に1-2の僅差判定で敗れ4年ぶりに王座から陥落した。5回にダウンを奪ったものの、被弾が目立ち、最後まで流れを変えることができなかった。勝てば12月27日にスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が参戦するサウジアラビアの「リヤドシーズン」で、1階級上のIBF世界スーパーフライ級王者のウィリバルド・ガルシア(35、メキシコ)への挑戦が内定していたが、父の寺地永会長(61)は白紙になったことを明かし、しばらく休養させる方針を口にした。

 「負けたと思った。崩しきれなかった」と拳四朗

まだ判定結果は出ていなかった。だが、拳四朗は、加藤健太トレーナーにグローブを外してもらっている最中に顔を伏せて号泣した。
「採点は厳しいかなと思った。負けたと思った」
 対する挑戦者のサンドバルはトレーナーに肩車されてリングを回り、何度も右手を突き上げていた。
「勝ったと思った。総合的に見てポイントは取れていると」
 2人の読みは間違っていなかった。
 1人目のジャッジは「115-112」でサンドバル、2人目のジャッジは114-113で拳四朗、そして3人目の英国人ジャッジは「117-110」でサンドバルを支持した。
 拳四朗は「練習していた。たまたまタイミングよく入った」という綺麗なワンツーを決めて5ラウンドにダウンを奪っていた。
 だが、この英国人は拳四朗がダウンを奪った5ラウンドと、続く6ラウンド以外はすべて挑戦者につけていた。あり得ない判定だ。
 寺地会長は、「4ポイントは勝ったと思っていた。周りの意見もそうだった。ずっと採点をつけていた。4ラウンドまではドロー。5ラウンドのダウンで2ポイント差、続く6ラウンドで3ポイント差…と。そんなジャッジがいることも想定しておかねばならなかったんでしょうか」と、怒りを込めて憮然。
 ただ、試合後の顔は、如実に勝者と敗者のコントラストを浮き彫りにしていた。右目の周辺が塞がりそうなまでに腫れた拳四朗と、サンドバルは左目下に傷はできていたが、腫れるほどのダメージは負っていなかった。
「サンドバルは強くて崩しきれなかった」
 拳四朗は素直に敗戦を認め、ファンに両手を合わせて謝罪した。
 ここまで被弾する拳四朗を見たことはなかった。
 ジャブからプレスをかけていくが、打ち終わりに右のストレートを合わせられ、ことごとく被弾した。局面を変えようと、攻勢をかけて正面に立つと、そこに左フック。右を強打すると、右を相打ちされ、拳四朗が押し負けた。体が開くクセや、角度、パンチを放った後のガードの隙を研究しつくされていた。
 今回は、ロス合宿で,WBC&IBF世界バンタム級王者の中谷潤人(M.T)が師事するルディ・エルナンデストレーナーからボディワークを使ったディフェンステクニックを学んだが、寺地会長は「そのディフェンス以上に相手に研究されていた」という。
 拳四朗と名コンビを組む加藤トレーナーには、そういう危機を脱出させるための的確な指示と修正をアドバイスできる能力がある。だがそれが機能しない。
「足を使ったり(より)プレッシャーをかけ、策を色々やるにはやったが、迷いが出てしまった。ラウンドを重ねるごとに迷った。サンドバルのリングをコントロールする力が想像を上回っていた。ただ打って打たれただけじゃない。そこが敗因」
 遠くから左を打ち込み、ステップバックでサンドバルの反撃を外しにいっても、距離を詰めると、右をもらい、思い切ってプレッシャーを強めると、またそこで逆襲を食らう。何をしてもうまくいかず、どちらにシフトすべきかを迷っている間に、終盤は、勝負にいかざるを得なくなり、パンチを当てた分の“倍返し”でパンチをもらった。

 

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