
「プロレスラーもできない170Kgフルスクワット」阪神の石井大智が40試合連続無失点の日本新記録…1m75“小さな雑草155㎞右腕”の源流…「明日も使ってもらえるかの不安をバネにした向上心」
阪神の石井大智(28)が17日、東京ドームでの巨人戦の2点リードの8回に登板、一死から岡本和真(29)に内野安打を許したものの、無失点で切り抜け、40試合連続無失点のプロ野球新記録を樹立した。これまでは2021年に記録した西武の平良海馬(25)の39試合が連続無失点記録だった。プロ初の国立高専高校出身で、独立リーグを経て、2020年のドラフト8位入団から這い上がってきた。あえて常に不安を忘れず前を向くストイックな向上心とプロレスラーも顔負けの肉体が、虎の絶対的セットアッパーが達成した大記録の源流にある。
「今後も100%の準備をして」
偉大なる記録達成の舞台は東京ドームだった。
藤川監督は3-1で迎えた8回に3番から始まる好打順に石井をぶつけた。先頭の泉口は147キロのストレート1球で仕留めた。押し込んでのセンターフライ。岡本にはショート右を襲ったゴロが内野安打となったが、続くキャベッジには、いきなりボール3にしながらも動揺することなく全球ストレート勝負。フルカウントから内角へ150キロのストレートがズバッと決まると球審が体をねじって卍ポーズでのストライクコール。キャベッジは何やらわめいて不服を訴えたが、石井は涼しい目をしていた。
二死を取り岸田はスライダーでライトフライ。40試合連続無失点の大記録達成の瞬間に石井はグローブを2回たたいて、森下に拍手を送り、淡々とした表情でマウンドを降りた。
記念球をベンチで大山から手渡され、ハイタッチで、出迎えられてようやく笑みが浮かんだ。まだ1イニング残っているとの思いがどこかにあったのだろう。
岩崎が走者を出しながらも試合をクローズすると、ビジョンに記録更新のニュースが映し出され、石井は写真撮影を行った。
NHKなど各社の報道によると、石井は「今日も無失点に抑えることができてよかった。打球が頭に当たった試合は2球で降板したのでその後を抑えてくれたピッチャーのおかげで記録が続いた。リード面で助けてくれるキャッチャーや野手の方々にも感謝したい。今後も100%の準備をしてマウンドに上がりたい」とコメントした。
最後に失点したのが、4月4日のここ東京ドームでの巨人戦。試合には勝ったが甲斐にタイムリーを打たれた。以降、無失点が続き、6月6日の交流戦のオリックスでは9回に打球が頭部を直撃して担架で退場し、そこから約3週間戦列を離れたが、復帰後も無失点を継続した
藤川監督も「まあまあいつも通りで彼らしいピッチングだったと思う。記録?そのあたりは、ファンの皆様にお任せしてシーズン中は選手達は同じ気持ちで戦ってもらう。それに尽きる。本人がどんなコメントを残しているか、それを楽しみにしてもらいたい。ナイスピッチング」との独特の表現で大記録達成を称えた。ここまで43試合で防御率は0.21である。
石井の何がどう凄いのか。
トレーニングやサプリメントの国内屈指の専門家で、阪神でも数年前から定期的にコンディショニングをアドバイスしているトレーナーの桑原弘樹氏は、新人研修で一人居残って質問をなげかけてきた石井の姿が忘れられないという。
「私は野球のことはわかりませんが、プロのマウンドに立つ手前の手前にある体作りに深い探求心を持っている選手でした。小さい体でプロの世界で生きていくためには、何が必要かを常に考えていて、その熱量は5年たった今も変わらないんです。これだけの地位を確立しても、将来が心配だ、明日抑えられるか心配だ、明日使ってもらえるか心配だ、といつも口にしています。それが常にレベルアップを求める彼の向上心につながり生活のすべてにつながっているんだと思うんです」
石井が8位指名された2020年のドラフトは1位がサトテル、2位が伊藤将、5位が村上頌、6位が中野、7位が高寺という超当たり年だった。
阪神のロッカールームには、各自のサプリメントの置き場所があるそうだが、背番号「69」のスペースには、ひときわたくさんのプロテインやサプリなどが用意されていて「何かひとつ切らしているものがあると心配になり」ついつい増えているという。