
井上尚弥は真吾トレーナーが「バランスが良くパワーを感じた」”最強挑戦者”アフマダリエフを倒せるのか…「総合力で上」と豪語の敵陣営は会見でマネージャーが”ささやき戦術”で情報統制?!
ただアフマダリエフはそのタパレス戦についてもこう”言い訳”をしている。
「前の試合で負った骨折(左手首)の影響が残っていた。今の治り具体は順調だ」
マキシム・ミハイロマネージャ―は「手首の骨折が治りきっておらず(タパレス戦の)2ラウンドで(再発して)不利になった」と補足した。
会見中に、何度かアフマダリエフが返答する前に、そのマネージャーが隣からコソコソと小さな声でささやきかけていた。「こう答えた方がいい」などとの入れ知恵をしていたそうだ。
大橋陣営が聞いていたこともあり、”ささやき戦術”で一種の情報統制を敷いていたのだろう。そのピリピリ感こそが陣営の本気度を示していた。
「この試合に100%ではなく150%かける。キャリアで一番ビッグな試合になる。井上のことは、人柄、戦績も含めて尊敬している。この2人が戦えば見応えのある試合になる。世界中がこの試合を楽しみにしている」
そういう言葉で会見を締めくくった。
会見を聞いた真吾トレーナーは「総合力で上」という発言にカチンときた。
「その(総合力の)輪を一つ大きくしたのが尚弥。向こうもパーフェクトな円を描いているが、もう一つ尚弥は大きい。すべてにおいて」
静かな火花を散らした。
井上は7月10日のカード発表会見で「今回は判定決着でいいんじゃないかと思っている。しっかりと勝ち星をとりにいく。そう言ったときの井上尚弥が一番強い。KO宣言しないときほど劇的なKOシーンが12ラウンドの中で見られる」と発言した。
真吾トレーナーがその方針で準備を進めてきたことを明かす。
「気持ちは(尚弥と)一緒。全スパーをそれでやってきた。漠然とやるのではなく、その日、その日に課題を持って全部パーフェクトにやった。前回の戦い(2回にダウン)にはならない。レベルが上がるとそれなりの戦いをしていかなくちゃいけない。最終的にボクシングIQがポイントになる」
前戦のダウンは井上の弱点ではなく相手の力量を甘く見た油断に他ならない。 最強挑戦者のアフマダリエフを迎えるにあたって隙など1ミリもない。
アフマダリエフのスキルと肉体を見る限り倒すのは簡単ではないだろう。
「判定決着」を狙うプランはその実力を見極めた的確な判断だと言える。だが、プレスをかけられると手が止まるアフマダリエフに、クレバーで戦略家でもある井上が後塵を拝する姿だけは想像はできない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)