WBA世界スーパーフライ級王座を獲得した井岡一翔の試合前にはドーピングの大麻検出問題がクローズアップされた(写真・山口裕朗)
WBA世界スーパーフライ級王座を獲得した井岡一翔の試合前にはドーピングの大麻検出問題がクローズアップされた(写真・山口裕朗)

“ノーモア井岡問題”の新ドーピングルールは制定されるのか?

 日本ボクシングコミッション(JBC)の実行委員会が、今日7日に都内で行われ、替え玉ボクサー事件を未然に防ぐことができなかったことなどの不手際続きのJBC組織の改革案について協議される。その中の議題のひとつが、まだ整備されていないドーピングルールの方向性だ。日本プロボクシング協会のセレス小林会長(50)は、ドーピング検査で大麻成分が検出された場合には、違反と認定するようにルールを改正することを求めている。WBA世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(34、志成)が昨年大晦日のジョシュア・フランコ(27、米国)戦のドーピング検査で大麻成分が検出されたが、世界アンチドーピング機構(WADA)が定める基準値に達しない微量だったため、JBCルールには違反していないとみなされ、6月24日の再戦が認められていた。JBCが定める新しいドーピングルールに協会サイドの意見がどう反映されるのだろうか。

 「ボクシングはクリーンなイメージでないとダメ」

 

 現役時代に井岡が獲得したのと同じWBAのベルトを腰に巻いていたセレス小林氏がJBCとの実行委員会で、協会サイドを代表してドーピング問題に意見を具申した。
「ボクシングはクリーンなイメージでないとダメなんです。いけないものはいけない。大麻は、タイやオランダやアメリカの一部では解禁されているが、日本ではダメ。それがすべてだと思う。数値(大麻成分の検出量)の問題ではない。そこは、一般の人にわからないし、ボクシングは薬をやってもいいスポーツなの?と思われるのが嫌。井岡がどうこうと言っているわけではないが、厳しい処分が必要ではないか」
 昨年大晦日のドーピング検査で井岡の尿から大麻成分であるTHCが検出された。井岡陣営が同席のもとB検体の再検査も行われたが、そこでも禁止薬物である大麻成分が検出された。ただWADAの定める基準値に達しない微量だったため、JBC規定の97条のドーピング違反には該当せず、処分対象とはならず6月24日の試合出場は認められた。
 大麻成分が検出され、B検体でも疑いがなかった際に、JBC内では6月24日の試合を認めず「厳しいライセンス停止処分を下すべきだ」という意見と「現状規定がないのだから、そこまで踏み込むのは無理」との2つの意見に分かれた。
 2020年の大晦日の試合でも井岡の尿から大麻成分が検出されたが、JBCの検体の杜撰な管理が明らかになり、また警察に相談したことで、B検体が没収され、井岡の潔白を証明するための再検査もできなかった。結局、JBCは、井岡側の弁護士が採用した大学の教授による「腐敗により大麻成分が生成された」との主張を認める答申書を出して、当時の理事長が井岡側に謝罪した。
 その際、新しいドーピングルールを制定することを約束していたが、何も作業をしておらず、不手際を繰り返した当時の理事長と事務局長が退任してJBCの体制ががらっと変わり、ドーピングルールについては手付かずのまま。そもそも厳しい処分を下す根拠が、JBCの規定にないため、すでに開催が決定していてWBAも承認した試合を中止にした場合、興行側やファイトマネーがふいになるフランコ側から、損害賠償請求などの訴訟を起こされるリスクがあった。
 JBCには、亀田裁判に負けて、財政が破綻することになるなどの“トラウマ”があり、新しいJBCの弁護団が、世界的なドーピング基準を調査した結果、WADAの規定に準拠する形で、今回、井岡の大麻検出を不問とした。
 だが、高額な加盟料の問題もあり、JBCは日本アンチドーピング機構(JADA)にもWADAにも加盟しておらず、WADAの規定に準拠する必要はない。

 

関連記事一覧