
「万が一、阪神がCSで負けるようなことにでもなれば今年は日本シリーズの名称を使うべきではない」阪神が独走優勝し2位以下が勝率5割を切った状況でのCS行方に球界大御所が警鐘鳴らす
CSが導入されて以来、ここまでリーグ優勝チーム以外の2位、3位チームが“下剋上”を果たし日本シリーズ進出を決めたのは、セ・リーグで4度、パ・リーグで3度ある。ただ勝率を5割を切ったチームが日本シリーズに進出したことは一度もない。
そして“下克上日本一”は、セでは、2007年の2位の中日が3位の阪神、優勝の巨人を撃破して日本シリーズでも日ハムを下したケースと、昨年は2位の横浜DeNAが2位の阪神、優勝の巨人を破り、日本シリーズでソフトバンクを4勝2敗で下したケースの2度だけ。昨年の横浜DeNAの成績は、71勝69敗3分 勝率.507で、ギリギリ勝率5割をキープしたが、優勝した巨人とのゲーム差は11.5差あった。
パは、2010年に3位のロッテが2位の西武、優勝のソフトバンクを下して日本シリーズでも中日を破ったケース、2018年に2位のソフトバンクが3位の日ハム、優勝の西武を下して日本シリーズで広島に勝ち、翌年も同じく2位のソフトバンクが、3位の楽天、優勝の西武を破って日本シリーズで巨人を下したケースの3度“下克上日本一”がある。3位からの“下克上日本一”に成功した2010年のロッテのシーズンの成績は、75勝67敗2分 勝率.528で、優勝したソフトバンクとのゲーム差は2.5差だった。
広岡氏は、「勝率5割を切ったチームにはもうCS出場権を渡さないのが正当だろう。興行的にそれが無理であるのなら、事前にゲーム差などの条件を設定しておいて(ファイナルステージでの)アドバンテージを2勝にするなどリーグ優勝したチームが有利となるルールに見直す必要があるだろう」と提案した。
では、その広岡氏が危惧する事態は起きるのか。
試合間隔が空いたチームは、ゲーム勘を失い、大きなハンデを背負うとされている。短期決戦はまったくの別モノという意見もある。
藤川監督は、公式優勝会見で、その問題について聞かれ「“放っておいてくれ”という感じですね。今日は楽しませてください」と話題にすることさえ嫌がった。
広岡氏のCS展望はこうだ。
「巨人、横浜DeNA、中日の3チームのうち、どこがCSに出てくるかわからんが、短期決戦は投手戦になるケースが多い。下剋上を果たす場合、ファーストステージで2人、ファイナルステージで4人の先発が揃っていないと厳しい。よほど打線が爆発すれば別だが、どこがCSに出てきてもそれだけの先発のいるチームは阪神以外にない。しかも阪神には1勝のハンデがあるわけで負けることは考えつらいが、短期決戦だけは何が起きても不思議じゃないからな」
確かに阪神は村上、才木、高橋遥、大竹、伊藤将、デュブランティエ、伊原と7枚も計算の立つ先発候補がいるが、巨人、横浜DeNA、中日の3球団は、4人目からずっと先発候補の名前が出てこない。阪神が有利であることは間違いないが、試合間隔の問題などの不確定要素がのしかかってくる。
広岡氏は「阪神がCS出場を果たせば済むという問題ではない」とも付け加えた。結果オーライではなく早急にルールの見直しを議論すべきだろう。
注目のCSは10月11日からファーストステージ、阪神が登場するファイナルステージは10月15日からスタート。日本シリーズは10月25日からパの本拠地で開幕する。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)