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井上尚弥とアフマダリエフが公式会見でツーショット(写真・山口裕朗)
井上尚弥とアフマダリエフが公式会見でツーショット(写真・山口裕朗)

「頑丈で動かないが気持ちの強い選手じゃない」井上尚弥が迎え討つ最強挑戦者と日本でただ一人戦った元世界王者が語る”怖さ”と”弱点”…「やられるパターンは想像できない」

「山中さんは異常に堅かった。種類が違うんだけどムロジョンが打ち込んできた時のパンチは堅いし重い。ただスイング系はオープンで手打ち。回転力を生かそうとしているんでしょうね。そこは使い分けていますよ。僕の時はトリッキーに右を遠くから飛び込んで打ってきたが、あれは僕との身長差を補うため。体にバネがあり、小さい選手で大きい選手とやっているので、そういうスキルは高い。井上選手にやるかどうかはわかりませんが、そこまでの怖さはない。見えない反則を使うダーティーなボクシングもやってきません」
 岩佐氏はアフマダリエフの弱点もいくつか感じていた。
「気持ちがそんなに強い選手じゃない。当たるとひるむんです。(4ラウンドに)一発、左ストレートが当たったときにひるんだ。あっと思った。流れの中でのパンチは当たる。鼻血も出していた。これまでダウン経験はないが、顎は強くないと思うんです。そういう恐れがあるから異常にガードが固い。そこは裏腹ですよ」
 これが井上にKO勝利の可能性も感じる理由だ。
 岩佐氏のジャブもヒットしていた。
「ジャブは当たる。僕はサウスポーで井上選手はオーソドックスでそこは違うが、井上選手のジャブは当たりますよ。それとコンビネーション。たんたんたんと1、2、3、4、5の5発目が当たったんで井上選手がコンビネーションで崩すんじゃないですか。そして狙い目がボディ。ボディは絶対に弱い。嫌がっていました。井上選手はボデイがうまいし、ボディ決着はありえます」
 岩佐氏はジャブとボディがアフマダリエフ攻略のパンチになるという。
「でもひるむような場面があると足を使うんですよ。ステップ、ステップ。選手によって使い分けている。ヨーイドン!で、いけいけでは来ない。最初は技術を出してくる。そこでいけるならいく、いけないなら徹底して足を使う。特にプレスをかけられると徹底して足を使う。カウンターのアッパーなども狙ってはいるが、攻めるか、守るかを10-0でスイッチしてきます。そうなると判定にもつれこむ可能性が出てくるんですよ」
 アフマダリエフは、タパレスに1-2判定で敗れ、前戦では格下の相手にTKO勝利したが、仕留めるまでに時間がかかり評価を落とした。その映像を岩佐氏に見てもらうと「確かにパンチが遅いですね」と言った。
「ムロジョンは相手の力量を見て舐めるんですよ。タパレスに負けた時も舐めていた。歯車が狂い、その差でああなった。それと左手を痛めているのかもしれませんね。0コンマ何秒打つ時に躊躇するんで、パンチが遅く見える。ただ井上君を相手に舐めることはない。全力でくるでしょうね」
 岩佐氏は、2018年のWBSS1回戦で元WBA世界バンタム級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を秒殺した試合と、2023年にスーパーバンタム級への転級初戦でWBC&WBO王者のスティーブン・フルトン(米国)を8回に沈めた試合が強く印象に残っているという。
「勝ちにいくことだけに徹底して超集中した時の精密さ、完璧さは物凄い。あのモードに入ると、今までの井上尚弥を越えていきます。それを今回も見れるような気がします」
 この岩佐氏の予想が世界一正しいのかもしれない。

(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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