
窮地を救ったバントシフト「ホイールプレー(ブルドッグ)」は70年前に巨人が取り入れたバイブル「ドジャース戦法」だった
ドジャースが6日(日本時間7日)、敵地でのフィリーズとのディビジョンシリーズ第2戦に4-3で勝利したが、9回に珍しいバントシフトでピンチを封じ込めた。1点差の無死二塁で、三塁手と一塁手が猛ダッシュし、遊撃手、二塁手が空いたベースをカバーするメジャーで「ホイールプレー」、日本で「ブルドッグ」と呼ばれるギャンブル要素のあるバントシフト。発案者の遊撃手、ムーキー・ベッツ(33)が動き出しを遅らせて、打者が強攻に切り替えられなかったものだが、これは1950年代にチームが取り入れていた伝統の「ドジャース戦法」だった。
「生きるか死ぬかの場面で使うプレー」
ピンチを救ったのは、まさかの“ギャンブル”バントシフトだった。
9回にデーブ・ロバーツ監督が、佐々木朗希でなく、ブレイク・トライネンを送り込んだ“迷走采配”のおかげで、3連打で2点を奪われ、1点差となり、なお無死二塁の場面だった。
ロバーツ監督は、左腕のアレックス・ベシアを投入したが、フィリーズは、途中出場の左打者のブライアン・ストットをそのまま立たせ、ロブ・トムソン監督はバントのサインを送った。
ドジャースのポッドキャスト番組「The Dodgers Bleed Los Podcast」が試合後に伝えた会見映像によると、トムソン監督は、「ブルペン勝負になれば、こっちに分がある。ホームでもある。まず同点を狙う戦略をとった」という。
その初球。ドジャースは、三塁手のマックス・マンシーと、一塁手のフレディ・フリーマンが猛チャージ、空いた三塁のベースカバーに遊撃手のベッツ、同じく一塁に二塁手のトミー・エドマンが走るというバントシフトを仕掛けた。
野手が車輪のように動くためメジャーで「ホイールプレー」、日本では、両頬が垂れたブルドッグに似ているため「ブルドッグ」と呼ばれるバント絶対阻止のシフトだ。だが、投球がボールとなりストットはバットを引いた。
2球目にドジャースは、また同じシフトを仕掛けるのだが、初球に手の内を見せてしまったため、強攻策に切り替えられる危険性があった。
だが、ベッツが三塁への動き出しをギリギリまで遅らせることでフィリーズにそのチャンスを与えなかった。
「ムーキー(ベッツ)がホイールプレーをうまく隠した。選手達には『ホイールプレーの動きがあれば強打していい』と教えていたし、二遊間はガラ空きになった。ただムーキー(ベッツ)の動き出しが遅かったので気がつかなかった」とはトムソン監督の試合後の回想。
左打者は、三塁手と遊撃手の動きで判断する。マンシーはチャージをかけてきたが、ベッツが連動していなかったため、一瞬、ストットの判断が遅れたのだろう。
三塁側にバントでゴロを転がしたが、すぐ目の前まで突っ込んできたマンシーが捕球すると、すぐさま三塁へ送球。ベッツは、走者のスライディングを避けるように、その上に体をのっけるようなアクロバチックな体勢になりながらもタッチアウト。同点機を潰したのである。
試合後の「スポーツネットLA」のインタビューによると、マンシーは「発案者はムーキー(ベッツ)だ」と言った。