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18年ぶりに優勝した阪神は岡田監督を先頭にペナントをもって場内を一周した
18年ぶりに優勝した阪神は岡田監督を先頭にペナントをもって場内を一周した

「来年オレがやらんかったら負けるよ」勇退に心が揺れた阪神の岡田監督の壮絶な覚悟の上にあった18年ぶりの歓喜…大阪万博の2025年まで3連覇を目指す

 阪神が14日、甲子園球場で行われた巨人戦に4-3で勝利し、9月負け無しの11連勝で王手をかけていたマジックを消して18年ぶり6度目のセ・リーグ優勝を果たした。阪神は6回に大山悠輔(28)の犠飛と佐藤輝明(24)の20号2ランで均衡を破ると、7回にも追加点。先発の才木浩人(24)が7回を1失点に抑え、最後は、巨人に1点差まで追い上げられたが、“守護神”の岩崎優(32)がなんとかしのいだ。9月14日での優勝決定は、阪神では、故・星野仙一監督時代の2003年の9月15日を1日上回って史上最速V。15年ぶりに再登板した岡田彰布監督(65)は就任1年目に見事な手腕でチームを頂点へと導いた。

 今日で“アレ”は封印して優勝を分かち合いたい

 

 甲子園を埋めた4万人を超える虎党が全員で大合唱した。
「いくつもの日々を越えてたどり着いた今がある…」と。
 ゆずの「栄光の架橋」。4-2で迎えた9回。守護神の岩崎が、今年7月に引退の理由になった脳腫瘍を再発させて28歳で急逝した同期入団の横田慎太郎氏が現役時代に使っていたテーマ曲で登場したのだ。もうそれだけでファンは目頭を熱くしていた。
「亡くなられたときからヨコ(横田)の分を背負って戦うと決めた」
 坂本に本塁打を打たれ、秋広にも二塁打を許した。だが、最後の打者、北村を高いセカンドフライに打ち取る。岩崎は静かに左手を夜空に突き出しマウンド上に歓喜の輪ができた。ベンチでコーチ陣と握手した岡田監督は、ゆっくりと歩いて、その輪に加わった。
「6度目の優勝やから6回な」
 岡田監督が6度宙に舞う。
 涙はない。代わりに勝負の9月に打撃不振に陥り、6回、意地の先制犠飛をやっと決めた4番の大山が「チームに助けられたと感じた」と号泣していた。 
 やがて沸き起こったのは岡田コール。恒例の場内インタビューで指揮官は誰もが待ち望んでいた、あの言葉を解禁した。
「今日で“アレ”は封印して、みんなで優勝をね。分かち合いたいと思います」
 大爆笑と大歓声が交錯した。
 タイガースのことだけを11年間考え続けてきた、65歳の指揮官が、たった1年で、とんでもない大仕事をやってのけたのである。

 2月の沖縄宜野座キャンプ。
 第3クールが終わった頃だったか。
 岡田監督から逆質問を受けた。
「今年アレできると思うか?」
「できると思いますよ」
 気楽に答えたが、岡田監督は「オレは、そうは思えへんよ」と否定した。
 昨年の“投手3冠”のエース青柳がブルペンで投げ込んでいたボールの質に疑念を抱き、シーズン中に途中帰国することになった新外国人のケラーも、すでに、この時点で「使えない」と烙印を押していた。
「才木、西純の2人で30勝できないときついかもな」
 実は、この時、すでに大竹や序盤戦のブルペンを支えた加治屋の躍進を予言していたのだが、まだ未知数で、計算が立つまでの状況にはなかった。
 中野の二塁へのコンバートによる二遊間強化に、一塁大山、三塁佐藤の固定、外野には、必ず内野のカットマンまで正確で強いボールを返球させ、内外野の連携や守備力のアップには手ごたえはあった。打撃も近本、中野の1、2番に「4番・大山」の形も見えていた。ノイジーにも「打点は稼ぐ」という淡い期待はあった。ルーキー森下にも可能性は感じていた。だが、肝心の佐藤に不安が残り「何番を打たせますか?」と聞いても答えは返ってこなかった。
 2005年の優勝メンバーが臨時コーチや評論家として沖縄を訪問していた。臨時コーチを依頼した赤星、鳥谷らに加え、コーチングスタッフにも今岡、藤本、安藤、久保田らのVメンバーが入っていた。
「ええメンバーがおったよな」
 見比べるとどうしても今回のメンバーは若い。実績でも劣る。

 

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