「え?なんで?と驚いた。坂本と梅野がいる中での35歳の捕手獲得の意図がよくわからない」阪神“日本一”OBが日ハムの伏見寅威と阪神の島本浩也の電撃トレードに疑問
2年ぶりに優勝した阪神は坂本が108試合にスタメンマスクをかぶりMVP級の活躍を見せた。打撃では打率.247、2本塁打、27打点で下位打線を支え、前監督でオーナー付き顧問の岡田彰布氏を「リードが本当に変わった」とうならせるほどの内角球をうまく織り交ぜた抜群のリードで、最強投手陣を支えた。捕手には困ってはいない。
ただ第2捕手となった梅野のスタメンマスクは32試合に留まり、序盤は才木の登板時には専属捕手として起用されていたが、途中から、そのコンビも解消され出番を失っていた。梅野の売りであるはずの打撃の方も打率.220、0本塁打、2打点とさっぱりだった。
また立命大から即戦力としての期待を寄せられ入団5年目の榮枝も、第3の捕手としての存在感を示すことができず、8試合の出場に留まり、打率.222、0本塁打、1打点に終わっていた。
「おそらく伏見には第2捕手としての期待があるんだと思う。今の野球は、1年を通じて捕手を休ませながら使うので、坂本のバックアップとして考えているのだろう。坂本、梅野に続く捕手が育っていないという事情も手伝ったのかもしれない。怪我が多いポジションだけに坂本に何かあったときの危機管理とも考えられる。だが、伏見は35歳で梅野よりひとつ年上で、坂本、梅野、伏見と全員が右打者。しかも梅野は今季は打撃不振に終わったがFAを行使せずに残留して巻き返しに燃えているところ。梅野と榮枝のちょうど間くらいの年齢層の捕手を取るのならまだ狙いはわかるが、坂本、伏見、梅野の捕手3人を1軍に入れれば、若手が出てくる枠もなくなる。補強すべきポイントは果たしてここだったのか」
ファームでは、育成ドラフト2位の嶋村麟士朗(高知ファイティングドッグス)、ドラフト4位の町田隼乙(埼玉武蔵ヒートベアーズ)のルーキーコンビに経験を積ませているが、まだ時間がかかる。
榮枝が日本シリーズ前に「右尺骨骨折観血的手術」を行ったことや、来年のWBC期間中に坂本が抜ける可能性があることなども伏見獲得につながったのかもしれないが、決して第1、第2捕手に困っている状況ではない中での35歳の伏見獲得の意図はわかりにくい。
ただ疑問を呈した池田氏は日ハム時代の伏見を見てきた中で「日ハム時代よりは出場機会が減るのかもしれないが、使えば結果の出せる選手」と評価している。
「35歳だが動きなどは年齢を忘れさせるくらい若い。バッティングは勝負強く、経験豊かで若い投手陣からの信頼が厚い。伊藤大海とバッテリーを組む機会が多かったが、彼のいい面を引き出す配球でうまくリードしてきた。パ・リーグはゾーン勝負してくるので、坂本、梅野とはまた違う配球でさらに阪神の投手陣をレベルアップさせる可能性もある」
東海大から2012年のドラフト3位でオリックスに入団した伏見は、2022年のオフに西武から森がFAでオリックスに移籍してきたことで出場機会が減ると危惧しFAで日ハムへ移籍した。
今季は、日ハムで65試合でスタメンマスクをかぶった田宮に次ぐ、46試合にスタメン抜擢され、代打や途中出場を含めて64試合に出場して打率.241、2本塁打、11打点の成績を残していた。だが、2年目の進藤も育ち、ちょうど3年契約が切れる伏見は、日ハムとしては放出可能な戦力だった。
果たしてこの電撃トレードが阪神の球団初のリーグ連覇を後押しすることになるのか。その成否は来年10月に明らかになる。

