「ちょっと煽りすぎ」なぜ那須川天心は井上拓真とのWBC世界バンタム級王座決定戦の公式会見で筆者の井上尚弥に関する質問に答えずビッグマウスを封印したのか?
プロボクシングの「Prime Video Boxing 14」(24日・トヨタアリーナ東京)の公式会見が21日、都内で行われ、WBC世界バンタム級王座決定戦に挑む同級1位の那須川天心(27、帝拳)と同級2位の井上拓真(29、大橋)が静かな火花を散らした。天心が言い続けている「僕が勝たなきゃボクシング界は面白くならない」の発言にスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)への「挑戦の意味が含まれているのか?」と筆者が質問したが「ちょっと煽りすぎ」「今言っても説得力がない」と明確な回答をせずビッグマウスを封印した。なぜなのか?

2人は目も合わさず握手もしなかった。
公式会見後の恒例ツーショット写真撮影の時間にピリピリした空気が漂った。天心がその理由をこう説明した。
「シャイなんで。(笑)。今日まで一回も目を合わせていない。計量の時じゃないですか。その時に見ればいい。普段からあまり見ない。当日だったりとか、そこでいろいろ合わせる。楽しみにして下さい」
23日の前日計量ではフェイスオフがある。
会見では、2人の間にWBCのベルトが置かれた。辰吉丈一郎、山中慎介、井上尚弥、そして前の持ち主は中谷潤人(M.T)という伝統と権威のあるベルトだ。
天心は「やるべきことをやってきた。しっかり勝つだけ。ベルトを意識していなかったが目の前でベルトを見ると、ワクワク感とたぎるものが生まれてきている」と言い、世界ベルトの意義を「格」という言葉で表した。
「ベルトを持った持たないで人間って評価する。お金を持っているから、有名だから凄いとする風潮がある。それは好きじゃない。ベルトを持っていることで見られ方が変わるには面白いが、持っても自分の価値は変わらない。腰に付けるだけ。(ベルトを巻いたまま)街に繰り出して歩けない(笑)」
一方の拓真は「大きい舞台を用意して下さってモチベーションは高い。(勝利を)勝ち取って(ファンや関係者に)恩返しをしたい。今回の試合に関しては、ベルトがどうのこうのじゃなく、天心選手に勝つということだけ。結果的にベルトは後からついてくる」と、世界ベルトではなく、打倒天心だけにフォーカスした。
天心はビッグマウスを封印した。
このカードが決定して以来、何度も「僕が勝たなきゃボクシング界は面白くならない」と発言してきた。筆者が「その言葉に今後の展開に兄の井上尚弥へ挑む意味も込められているのか」と質問したが、「試合前に煽りすぎです。カッカし過ぎ。ちゃんと塩分摂ってください」とジョークで返してその質問に答えなかった。
筆者は、Xにも書いたが、カッカしたわけでもなく、医師からは、逆に控えめを指示されているほど塩分過多。それを会見後に天心に伝えると彼は笑っていた。何も挑発発言を引き出したくて聞いたわけではない。スポーツメディアには、ある意味、ファンが知りたいこと(別にそれを知りたくないというファンもいるだろうが)を伝えねばならない役割がある。
天心は8月に自ら主催した「天心祭り」では、友人のお笑い芸人、粗品とのトークショーで井上尚弥との対戦の可能性について聞かれて「まだ階級も違うしチャンピオンでもないから、まだまだそういうこと言っても現実的でもないし、夢物語と思う人が多いかもしれないので、時が来れば」としながらも、「いつかやる。当たり前でしょう」と答えていた。だが、この日は、こう続けた。

