なぜ井岡一翔は堤vsドネアの勝者ではなく井上拓真への挑戦を口にしたのか…13度目の大晦日にWBA世界バンタム級挑戦者決定戦…天心敗因をズバリ分析の“IQ”が弾き出した勝算
ただ堤vsドネアの勝者は、母親の死去による精神的ショックを受けて休養王者となったアントニオ・バルガス(米国)との統一戦を義務づけられており、井岡がその勝者に挑戦するのは、来年の秋以降、最悪大晦日まで待たねばならないという事態になりかねない。バルガスは井岡のジムメイトの比嘉大吾がドローでタイトルに届かなかった相手。もしバルガスが王座を守れば因縁もあるのだが36歳の井岡には時間はない。
「(マルティネスに連敗して)追い詰められていた。現役を続ける上で自分の残りのボクシング人生を考えた時、残り時間で何が挑戦できるか、負けたからこそより大きな挑戦をしてこの連敗から脱出する大きな切り口にしたいなと。 そこ(5階級制覇)が一番インパクトというか説得力があるかなという思いで挑戦したいと」
5階級制覇挑戦の理由をそう説明していた。
加えて試合の配信プラットホームがABEMAから大橋ジムが提携しているLeminoへの鞍替えが決まったことで障害もなくなり、タイミング的にも、来年5月の東京ドームでの井上尚弥vs中谷潤人(M.T)のセミファイナルという舞台がピタリとあてはまる。
志成ジムの二宮雄介マネージャーも「もし挑戦させてもらえるならお願いしたい」と井岡の希望をバックアップする考えを示した。
だが、その前にオルドスゴイティを撃破しなければならない。一流クラスとは対戦していないが、16戦15勝(14KO)1敗の高いKO率があり、ぶんぶん振り回してきて荒っぽい。今年4月には「リヤドシーズン」のWBCフェザー級グランプリに挑み、ダウンを奪われるなどして黒星を喫しているが下から上がってくる井岡との体格差も不気味だ。
「1試合だけ試合を見たが、サウスポーの選手との対戦であまり自分の試合に参考にできるようなものではなかった。体格への不安?ないこともないですけど、やると決めた以上、その選手とやらなきゃいけないですし大晦日までにできる準備というものをしっかりしてリングに上がりやってきたことを信じていつも通り試合でパフォーマンスを出すしかない。自分自身もこの階級で戦える自信をつけるためにやってきている」
5階級制覇への計画は井岡らしい観点で進めている。
「今までやっていたことを一度、破壊して、自分自身の再生に向けて新たな取り組みや、練習中での意識といった部分を大きく変えるようにしている」
具体的にはこうだ。
「距離感の圧力、イコールパワー、スピードに対しての駆け引きがある。自分の今まで培ったテクニックだったり、感性だけでは多分対応しきれない。パワーと言っても、いろんなパワーがあり説明が難しいので誤解しないでいただきたいが、スピードや瞬発力という部分での距離の縮め方、相手のオフェンスに対しての耐えるフィジカルとか、そういうフィジカル面が距離感の上で凄く必要になる。ボクシングに対して単にパワーを出すとか、パンチ力をつけるのではなく、距離感に深みを出す、厚みを出すためのパワー要素、スピード、瞬発力が大事なのかなと思って取り組んでいる」
つまりパワーアップする箇所を単純なフィジカルではなく、彼の武器である距離と出入りで勝負可能とするための瞬発力、バンタム級のパンチに耐えうる耐久力の強化に当てているのだ。このあたりの狙いも井岡が“レジェンド”とリスペクトされる理由だろう。
「やるからには応援してもらっている人たちにバンタム級に上げて井岡は強くなったなと思ってもらわないと意味がない。相手が誰であっても自分の成長を求めて、やるべきこと、決めたことをやっていくだけ」
それがファンへのメッセージ。井岡は国内で日本人パートナーを相手に調整を進める予定となっている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

