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就任1年目の鬼木監督が鹿島アントラーズを復活Vに導いた(写真・アフロスポーツ)
就任1年目の鬼木監督が鹿島アントラーズを復活Vに導いた(写真・アフロスポーツ)

「復活したというよりは新しい鹿島が生まれた」アントラーズを復活Vさせた就任1年目の“優勝請負人”鬼木監督の哲学とは?

 J1リーグ最終節が6日に一斉に行われ、首位の鹿島アントラーズが2-1で横浜F・マリノスを破り、9シーズンぶり9度目の優勝を決めた。ホームのメルカリスタジアムでFWレオ・セアラ(30、ブラジル)の連続ゴールでリードを奪った鹿島は、マリノスの反撃を1点に抑えて2位の柏レイソルを勝ち点1差で振り切った。天皇杯との二冠に輝いた2016シーズンを最後に国内タイトルに無縁だった常勝軍団は、今シーズンから指揮を執った鬼木達監督(51)の下でなぜ復活を遂げられたのか。

 想像以上のプレッシャーの中で…

 止まったままになっていた時間を9シーズンぶりに動かした。
 5分台が表示された後半アディショナルタイムの1分。マリノスのMF天野純(34)に技ありのループ弾を決められても鹿島は動じない。その後は一本のシュートも打たせずに、前半20分、後半12分にレオ・セアラが決めた2発を守り切った直後に、9度目のリーグ制覇を告げる主審の笛が鳴り響いた。
 森保ジャパンに定着した守護神・早川友基(26)が雄叫びを上げれば、ゲームキャプテンのDF植田直通(31)が目頭を押さえている。2018シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)こそ制したものの、国内三大タイトルに限ればリーグ戦と天皇杯の二冠を獲得した2016シーズンが最後だった空白期間についにピリオドを打った。
 昨オフに就任した鬼木監督が、今シーズン最多の3万7079人が駆けつけたホームのメルカリスタジアムの光景を思い出しながら苦笑した。
「ホッとしている気持ちのほうが強いですね。ここでタイトルを獲らなければ、どのような雰囲気になっていたのか。想像するのも怖いくらいなので」
 4度のリーグ優勝を含めた7個のタイトルを獲得した川崎フロンターレを、就任から8年目を迎えていた昨シーズン限りで退団。千葉県の強豪・市立船橋高校から1993シーズンに加入し、計6年間プレーした古巣・鹿島の新監督に就任して1年目で、Jリーグ史上初の異なる2つのクラブでJ1リーグを制した監督になった。
 もっとも、就任直後には意外な状況に気づいている。
「鹿島アントラーズに来て、選手たちが思った以上に大きなプレッシャーの中で戦っているんだと思いました。本当に想像以上でした」
 リーグ戦とYBCルヴァンカップ、天皇杯、そしてACLを加えた21冠は他のJクラブの追随を許さない歴代最多。しかし、最終節で川崎に歴史的な大逆転を喫し、リーグ戦連覇を逃した2017シーズンから長く、暗いトンネルに入り込んだ。くしくも2017シーズンから川崎を率いていたのが鬼木監督だった。
 鹿島の前に立ちはだかってきた指揮官は、常勝軍団という歴史をいつしか重荷に感じていた新天地の選手たちへのアプローチをこう振り返る。
「プレッシャーを取り除こう、とは思いませんでした。選手たちに言ったのは、タイトルを一番欲しているのは自分だ、と。選手たちがタイトルをかけて戦えるのはもうやり甲斐しかないし、だからこそ大好きなサッカーをやっている以上は楽しもうよ、と。もしかすると、その中で気持ちの変化といったものはあったかもしれないですね」

 

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