「復活したというよりは新しい鹿島が生まれた」アントラーズを復活Vさせた就任1年目の“優勝請負人”鬼木監督の哲学とは?
鬼木監督の招聘に動いた昨シーズン終盤。クラブOBの中田浩二フットボールダイレクター(FD、46)とともに交渉の席に着いた鹿島の小泉文明社長(45)は、鬼木氏へ「本気でタイトルを獲りにいきます」と思いの丈を熱く伝えた。
その証がオフのレオ・セアラやDFキム・テヒョン(25)、DF小池龍太(30)らの獲得であり、他チームへ期限付き移籍していた荒木と松村の復帰となる。
怪我人が続出した夏場にもDF小川諒也(29)やFWエウベル(33)らを積極的に補強した結果を、親会社メルカリの会長でもある小泉社長は苦笑しながらこう明かす。
「正直、予算に対してかなりお金を使ったところはあります。それでも今年はタイトル獲得が至上命題だったので、強化部も一生懸命に交渉してくれました」
昨年10月にFDに就任。鬼木体制をサポートしながら古巣の再建に奔走してきた中田氏は、鬼木監督の来シーズン続投を明言するとともに、黎明期から続く鹿島に“新しい鹿島”が融合された結果としてのタイトル獲得と位置づけた。
「言い方が良いのか悪いのかはわからないけど、鹿島が変に過去に縛られた中で固定観念というか、止まっていた部分があったと思う。そこへオニさんと一緒に“新しい鹿島”を進められたと思うし、今までチームとして大事にしてきたものとのバランスをうまく取りながらやってきたのが良かったと思っている」
くしくも中田FDも、鈴木と同じく“新しい鹿島”に言及した。プレッシャーを楽しむマインドに、キャプテンで元日本代表のMF柴崎岳(33)がベンチにすら入れない競争の厳しさ。これらを融合させた結果として手にした、史上最多を更新する9度目のJ1リーグ優勝は通過点でしかない。鈴木がうれしそうに前を見すえる。
「満点が100としたら、今は5くらいじゃないですか。そのくらい求めるものが高い監督だし、そこへ全員がチャレンジしよう、成長しようと反応しているので」
秋春制への移行に伴い、W杯北中米大会後の来年8月に開幕する来シーズンへ。鈴木の笑顔は、現在進行形で変貌を遂げる鹿島を楽しみにして欲しいと物語っていた。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

