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  • 練習風景に違和感…なぜ森保監督は“格下”ミャンマー戦に疲労困憊の三笘薫や冨安健洋らの欧州組を招集したのか?
 こうした考え方に沿えば、三笘は休養を与える対象になる。プレミアリーグとUEFAヨーロッパリーグをフル回転で戦ってきた三笘は、招集されていた10月シリーズを体調不良で辞退。その後のブライトンでのパフォーマンスも精彩を欠いている。  現地時間11日のプレミアリーグではフル出場した冨安も、同8日のチャンピオンズリーグでは前半だけでベンチへ下がった。アーセナルのミケル・アルテタ監督(41)は「彼は前半から少し違和感を覚えていたので、リスクを冒したくなかった」と交代理由に言及している。  日の丸を背負う状況を選手たちは招集を意気に感じるし、モチベーションも高めてチームに合流する。そこでブレーキをかけるのも代表監督の仕事のひとつと考えれば、三笘や冨安、さらにミッドウィークにヨーロッパの国際大会も戦っている久保らを招集するにしても、今回はシリア戦限定とするのがベターな選択だったのではないだろうか。試合2日前の状態を見る限り、三笘や冨安はおそらくミャンマー戦のピッチには立たないだろう。試合を回避して休養を与えられたといっても、イングランドから日本へ、さらにはサウジアラビアへと続いた長距離移動は確実に2人の体へ影響を与えるだろう。  カタール大会での快進撃が評価された森保監督は、歴代の代表監督で初めてW杯後も指揮を執っている。メンバー選考や戦い方が新体制下でリセットされるのではなく、2018年9月からの積み重ねが今年3月に船出した第二次森保ジャパンでも継続。6月以降は破竹の6連勝を、得点24、失点5という圧倒的な数字とともにマークしてきた。  好調の要因には、ヨーロッパ組の選手たちが各所属クラブで、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを含めた高いレベルの戦いを積み重ねて、個々の経験値を飛躍的に上げている点も含まれる。だからこそ、いよいよ迎える公式戦へ「石橋を叩いて渡る」のではなく、2チーム編成プランの具現化を含めて、代表チームを取り巻く現状にマッチした、新しいチームマネジメントを施す絶好のチャンスととらえるべきだった。  最新のFIFAランキングを見れば、日本がアジア最上位の18位なのに対してミャンマーは158位。同じグループBに入った92位のシリア、115位の北朝鮮をさらに下回るミャンマーを決して見下しているわけではない。それでも過密日程下の主力を回避させた陣容で戦えば選手層も厚くなり、長い目で見れば日本のプラス材料になってくる。  今回のW杯アジア2次予選から、ベンチ入りできる選手数がコロナ禍で拡大されていた「26」から従来の「23」に戻る。それでも森保監督が当初26人を招集した背景には、怪我や体調不良などの不測の事態に備えたリスクマネジメントも反映されていた。  実際に指揮官も「選手のコンディションなども踏まえて、1戦目、2戦目と選手を入れ替えながら戦う選択肢も考えていきたい」と語っていた。しかし、活動開始を前にFW古橋亨梧(28、セルティック)ら4人が怪我で相次いで辞退。代わりに招集された選手は14日時点で3人にとどまるなかで、25人体制でミャンマー戦を迎えようとしている。  しかし、FW前田大然(26、セルティック)の代わりに招集されたDF渡辺剛(26、ヘント)が、ベルギーから経由地オランダへ向かう航空機が欠航するトラブルに直面。DF町田浩樹(26、ユニオン・サンジロワーズ)とともに14日午後に帰国した。  ただ、渡辺と町田は14日のほぼ同じ時間帯に行われていた練習には参加できなかった。おそらく三笘とともに15日の公式練習からチームへ合流する予定で、ミャンマー戦の前日にして、ようやく招集されている25人全員が顔を合わせる形になる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)
 こうした考え方に沿えば、三笘は休養を与える対象になる。プレミアリーグとUEFAヨーロッパリーグをフル回転で戦ってきた三笘は、招集されていた10月シリーズを体調不良で辞退。その後のブライトンでのパフォーマンスも精彩を欠いている。  現地時間11日のプレミアリーグではフル出場した冨安も、同8日のチャンピオンズリーグでは前半だけでベンチへ下がった。アーセナルのミケル・アルテタ監督(41)は「彼は前半から少し違和感を覚えていたので、リスクを冒したくなかった」と交代理由に言及している。  日の丸を背負う状況を選手たちは招集を意気に感じるし、モチベーションも高めてチームに合流する。そこでブレーキをかけるのも代表監督の仕事のひとつと考えれば、三笘や冨安、さらにミッドウィークにヨーロッパの国際大会も戦っている久保らを招集するにしても、今回はシリア戦限定とするのがベターな選択だったのではないだろうか。試合2日前の状態を見る限り、三笘や冨安はおそらくミャンマー戦のピッチには立たないだろう。試合を回避して休養を与えられたといっても、イングランドから日本へ、さらにはサウジアラビアへと続いた長距離移動は確実に2人の体へ影響を与えるだろう。  カタール大会での快進撃が評価された森保監督は、歴代の代表監督で初めてW杯後も指揮を執っている。メンバー選考や戦い方が新体制下でリセットされるのではなく、2018年9月からの積み重ねが今年3月に船出した第二次森保ジャパンでも継続。6月以降は破竹の6連勝を、得点24、失点5という圧倒的な数字とともにマークしてきた。  好調の要因には、ヨーロッパ組の選手たちが各所属クラブで、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを含めた高いレベルの戦いを積み重ねて、個々の経験値を飛躍的に上げている点も含まれる。だからこそ、いよいよ迎える公式戦へ「石橋を叩いて渡る」のではなく、2チーム編成プランの具現化を含めて、代表チームを取り巻く現状にマッチした、新しいチームマネジメントを施す絶好のチャンスととらえるべきだった。  最新のFIFAランキングを見れば、日本がアジア最上位の18位なのに対してミャンマーは158位。同じグループBに入った92位のシリア、115位の北朝鮮をさらに下回るミャンマーを決して見下しているわけではない。それでも過密日程下の主力を回避させた陣容で戦えば選手層も厚くなり、長い目で見れば日本のプラス材料になってくる。  今回のW杯アジア2次予選から、ベンチ入りできる選手数がコロナ禍で拡大されていた「26」から従来の「23」に戻る。それでも森保監督が当初26人を招集した背景には、怪我や体調不良などの不測の事態に備えたリスクマネジメントも反映されていた。  実際に指揮官も「選手のコンディションなども踏まえて、1戦目、2戦目と選手を入れ替えながら戦う選択肢も考えていきたい」と語っていた。しかし、活動開始を前にFW古橋亨梧(28、セルティック)ら4人が怪我で相次いで辞退。代わりに招集された選手は14日時点で3人にとどまるなかで、25人体制でミャンマー戦を迎えようとしている。  しかし、FW前田大然(26、セルティック)の代わりに招集されたDF渡辺剛(26、ヘント)が、ベルギーから経由地オランダへ向かう航空機が欠航するトラブルに直面。DF町田浩樹(26、ユニオン・サンジロワーズ)とともに14日午後に帰国した。  ただ、渡辺と町田は14日のほぼ同じ時間帯に行われていた練習には参加できなかった。おそらく三笘とともに15日の公式練習からチームへ合流する予定で、ミャンマー戦の前日にして、ようやく招集されている25人全員が顔を合わせる形になる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)

練習風景に違和感…なぜ森保監督は“格下”ミャンマー戦に疲労困憊の三笘薫や冨安健洋らの欧州組を招集したのか?

  ミャンマー代表とのW杯アジア2次予選初戦(16日、パナソニックスタジアム吹田)を目前に控えた森保ジャパンが、異例の調整を強いられている。14日に大阪市内で合宿2日目が行われたが、フルメニューを消化したフィールドプレイヤーはわずか9人。この日に帰国したMF三笘薫(26、ブライトン)はホテルで静養に努め、DF冨安健洋(25、アーセナル)も別メニューで調整した。ヨーロッパ組の過密日程を承知の上で、ベストメンバーの招集にこだわった森保一監督(55)のマネジメント力があらためて問われる。

厳しい状況でタフに戦い続けたなかで成長できている部分もある」

 ピッチから伝わってきたのは違和感だった。
 ミャンマー戦を2日後に控えた合宿2日目。いるはずの選手が、どこにも見当たらない。練習が始まった直後。この日の午前中に帰国し、大阪入りしていた三笘がホテルでの静養に切り替えたと、日本サッカー協会(JFA)の広報担当者が説明した。
 怪我ではなく、蓄積していた疲労を考慮されて練習参加が見送られた。合宿初日の13日に帰国し、練習に合流していた冨安も同じく疲労で別メニュー調整に終始。この日から合流したキャプテンのMF遠藤航(30、リバプール)やMF久保建英(22、レアル・ソシエダ)ら9人の海外組も、軽めのウォーキングだけにとどめた。
 フルメニューを消化したフィールドプレイヤーはわずか9人だけ。前日までに帰国・合流していたMF伊東純也(30、スタッド・ランス)やFW浅野拓磨(29、ボーフム)ら6人のヨーロッパ組と、DF毎熊晟矢(26、セレッソ大阪)ら3人の国内組。ゴールキーパーは3人とも勢ぞろいしているが、戦術的なメニューを組めなかったのは言うまでもない。
 もっとも、森保監督は異例の調整を強いられる状況を見越していた。
 アメリカ、カナダ、メキシコで共同開催される2026年の次回W杯出場をかけた、公式戦のアジア予選が2試合ずつ組まれている11月シリーズ。国境を越えて移動日をはさむ関係で、アジアサッカー連盟(AFC)は初戦を16日の木曜日に、第2戦を国際Aマッチデー期間の最終日となる21日の火曜日に組むスケジュールで統一した。
 日本国内で国際親善試合を行う場合、初戦が金曜日に行われる日程が多かった。例えば10月シリーズは13日の金曜日にカナダ代表との初戦、17日の火曜日にはチュニジア代表との第2戦にともに勝利している。週末の各国リーグ戦を戦い、順次帰国してくるヨーロッパ組に万全の状態を整えさせるための日程だった。
 しかし、一日早まるだけで大きな違いが生じる。
「週末のリーグ戦を戦ったヨーロッパ組のなかで、最後に合流する選手が火曜日もしくは水曜日になる場合もある。これでは練習する時間もほとんどない」
 こう語っていた森保監督は、ミャンマー戦と21日に第三国のサウジアラビア・ジッダで行われるシリア戦へ、異なるチームを編成して臨む構想を描いた。ミャンマー戦は時差ぼけや移動のない国内組を中心に、シリア戦には移動距離が短いヨーロッパ組のベスト布陣で臨む形などが考えられたが、最終的には見送られている。
 ベストメンバーの招集にこだわった理由を指揮官はこう語る。
「これまでを振り返っても、厳しい状況でタフに戦い続けたなかで成長できている部分もある。どんな試合にも必ず成果と課題があるので、チームとして戦いながら経験を共有して、チームをさらに積み上げていきたい。そのなかで状態を見た上で休ませるなど、怪我のリスクを最大限に考慮しながら選手たちを起用していきたい」

 

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