「フェアな採点ができていない」ドネア夫人が不服も「鼻が折れた」堤聖也が「左拳4本の血豆が全部破けた」ほど殴られたレジェンドとの死闘を2-1判定で制した理由とは?
それでも堤は10ラウンドには、左のフックの連打からロープを背負わせ、11ラウンドには、強烈な右ストレートをクリーンヒットさせ、最終ラウンドには、威力十分の左フックを御見舞いした。
大きくよろけたドネアが一瞬、その左手のグローブをキャンバスに着いたかに見えた“疑惑のダウンシーン”までを演出した。
運命の判定を聞く際に、勝利を確信していたドネアは、ずっと両手をあげ、堤も右手を掲げていた。
米国から飛んできた名アナウンサーのジミー・レノン・ジュニアがまずスプリット判定であることを告げると、堤は一瞬、顔をしかめた。
「もうわかんない。僕はいつも指示を聞いて1ラウンド、1ラウンド全力で戦う感じだから、体感的には後半は取れて、序盤はトントンかなと思っていた。ただ(パンチを)効かされた印象で取れてたはずが流れたラウンドがあった。後半はもうポイントは考えられなかった。判定の時は怖かった。初めてのプロでのスプリット(判定)だった」
1人目は116-112でドネア、2人目は115-113で堤、そして3人目は117-111とだけ読みあげられ、「聖也…」の名を聞いた途端、堤はグローブをポンと叩き、その場でジャンプして喜びを表現した。
「ギリギリだった。ホッとしている。生き残れた…」
だが、この判定にドネアのチーフトレーナーを兼ねるレイチェル夫人は納得がいっていなかった。
「何が勝敗を分けた?ジャッジがすべてでしょう。一人が117-111…あり得ない。高見(亨介)の試合でもそういった大差が見られたと聞いた。堤はスピードのあるいいパンチがあったが、ジャブ、パンチの数、(ヒットしたパンチの)確率もこっちが上。フェアな採点ができていない。私達へのリスペクトが足りない」
ハッキリと採点に不服を示した。
ドネアも「少なくとも2ポイントは上回っていた」と同調するも「それを言ってもやり直すことができない。後悔しても取返しはつかない」と潔かった。
そして「ベリー、べりー、ベリータフ。彼のタフさに敬意を持ちながら、いいように展開できればよかったたが、タフさというより粘り強さがあった」と敬意を示した。
“ゾンビボクシング”。
そう形容詞される堤の粘り強さがまたしても勝利を呼び込んだ。
なぜこうも堤はタフなのか。
「中嶋一輝さん、増田陸、あとは南出(仁)もかなりパンチがあった。比嘉(大吾)もそう。結構ハードパンチャーと試合をしてきている。今まで殴られてきた経験が生きたかな」
堤は、これまで戦ってきた歴戦のハードパンチャーの名前を出した。
だが、その激闘の影響からくるダメージを心配する声があった。堤は、単身メキシコに飛び、WBO世界フェザー級王者のラファエル・エスピノサや、武居由樹(大橋)を倒してWBO世界バンタム級王者となったクリスチャン・メディナらとスパーをしてきたが、現地関係者から「あいつは本当の世界王者なのか」の陰口が飛ぶほど不甲斐ないスパーだったという。これまで井岡一翔ともスパーをしているが、クリーンヒットをひとつも当てることができなかった。

