角田裕毅の来季レッドブル降格は日本のF1人気凋落につながるのか…2026年日本GPの前売りチケットがほぼ完売の“謎の現象”も
2026年の日本GPのチケットは10月に販売を開始し、ほぼすべての席が完売。現在、販売されているのは西エリアのみ。キャンセルに伴うリセール・チケットも西エリアとVIPスイートプレミアムだけという状態だ。
なぜ、角田がシートを失ったのに、2026年の日本GPのチケット販売が好調なのか。そこには、日本におけるF1文化の独特の構造が見え隠れする。
F1発祥の地、イギリスでは基本的にファンはドライバーを応援する。これに対して、日本のF1人気はホンダによって作られ、支えられてきたという歴史がある。
今回の角田のシート喪失によって日本人ドライバー消滅は4度目となるが、そのうち3回(2000年、2015年、2026年)がホンダのF1復帰のタイミングと重なっている。日本人ドライバーがいなくなったのにもかかわらず、鈴鹿の観客が減らなかったのは、ホンダを応援しようとするファンが増えたからではないかと推測する。
また、2026年に関しては、もうひとつ理由が考えられる。それは、2025年に上映された映画「F1」の大ヒットだ。これにより、これまでF1を見ていなかった層が2026年からF1を見始めようとしているのかもしれない。
またフジテレビが、F1の日本国内における独占オールライツ契約を締結し、CS/ネットで放送・配信するほか、11年ぶりに地上波放送も行うことも、新たなファン層の開拓につながるだろう。
角田のシート喪失による影響がまったくないわけではない。それはファン離れではなく、次の日本人ドライバーの育成だ。角田はホンダとレッドブルによって育てられたF1ドライバーだった。しかし、ホンダとレッドブルのパートナーシップは2025年限りで解消され、2026年からホンダはアストンマーティンへパワーユニットを供給する。しかし、若手ドライバーの育成に関してはアストンマーティンと正式な合意は発表されていない。
もし、両社のコラボレーションがパワーユニットだけにとどまり、若手ドライバーの育成まで広がらなければ、ホンダが育成しているドライバーにとっては、F1への道のりは今後、険しくなるかもしれない。
(文責・尾張正博/モータージャーナリスト)

