井上尚弥の「中谷戦かフェザー転級かどっちに転ぶかわからない。5月は不透明」の衝撃発言の真意とは…大橋会長は「(挑戦を)受けるより挑戦する気持ちが強い」と説明もニュアンスにズレが
つまり井上自身が、挑戦を受ける形となる中谷戦よりも、さらに上を目指して5階級制覇への挑戦を希望しているというのだ。
この日の計量セレモニーでは、もしピカソに勝ち、リング誌の公認ベルトを年間に4度防衛すれば、1983年の元WBC世界ヘビー級王者ラリー・ホームズ(米国)以来42年ぶりであることが紹介された。ホームズは、あのモハメッド・アリ(米国)を倒した男として知られる。
「ラリー・ホームズの話もあったが、ここまでくるとモチベーションですよ。そこを一番大切にしていきたい」
大橋会長は井上が最高のモチベーションをキープできるマッチメークを模索しているのだろう。そしてポツリと「前から考えていたんだけどね」とも漏らした。
大橋会長は「フェザー級での5階級制覇はすぐにでもできる」が持論だった。
井上は、サウジで聞かされた大橋会長のプランだと言い、大橋会長は井上の希望だと言い、ここに若干のニュアンスの違いがある。
突然の衝撃発言の真意は読みづらいが、ひとつ言えることは、もう1戦1戦を吟味しなければならない年齢とキャリアに突入している井上陣営が、来年5月の東京ドームという大舞台でのカードは何がベストかを「決めかねている」ということだろう。
つまり今回がスーパーバンタム級の初戦となる中谷の実力をまだ測りかねているのかもしれない。中谷―ヘルナンデス戦の結果や内容を大橋会長は「関係ない」としたが、井上は「結果次第」と言った。中谷は、“査定試合”で「揺れる」井上陣営に決断させるだけのインパクトを残さなければならない。
もし5月がモンスターのフェザー級挑戦へ切り替わるなら異次元の長身ボクサーであるWBO世界同級王者のラファエル・エスピノサ(メキシコ)との対戦がファン待望のカードだ。
大橋会長は「エスピノサ?まだまったく考えていない。誰とやっても面白い」と具体的な対戦カードについての明言を避けた。
大橋会長は「こちらが決める」とした上で、「まだ(5月まで)時間があるんで、この試合が終わってよく話し合いたい」と最終結論を先延ばしにした。
衝撃発言がなおのこと今回の井上―ピカソ戦、中谷―ヘルナンデス戦の注目度も重要度もアップさせた。
井上は、中谷の明日の試合に何を期待するかと聞かれ「期待するものは別にないですけど、お互い自分もそう。まだ無敗なんで、しっかりとお互いの価値観を高めていきたい」と自分に言い聞かせるようにして答えた。
ピカソコールと、ナオヤコールが交錯する中で、井上はフェイスオフでピカソと約55秒間も睨みあった。記憶にある限り過去最長だ。そしてついに握手もしなかった。
前日の公式会見で井上は、珍しく「メキシコにベルトが帰ることは100%ありません」と挑発的なことを言ったが、その理由を聞くと「あまり調子にのんなよ」と言い、ふふふと笑った。
「予想以上にいい選手だなと感じた。この試合に懸けてきているなと感じる。気合も感じる。それにのまれないように、こっちもそれ以上の気迫でいかないと。ボクシングは1回ペースを失うと、巻き返せずにズルズルいくのはよくある。そこに気をつけてそれ以上の気迫で臨みたい」
大橋会長は「あの気持ちをリングに持ってきてもらいたい。判定までいくのが目的じゃなくて、ベルトを獲りに向かってきてほしい。アステカの戦士対サムライだと言うんだからね。そういうつもりで戦ってきてもらいたい」とメッセージを送った。
面白くなってきたサウジ決戦。leminoで独占ライブ配信される運命の試合の入場は日本時間午後10時に予定されている。

