なぜ天心は「連敗すれば自分の限界」の覚悟で”レジェンド“エストラーダとの挑戦者決定戦に挑むのか…危険な賭けか、井上拓真との再戦切符か…井岡一翔戦の結果待ちで「物語がなくなる」願いも
ボクシングに転向してまだ8戦。ボクシングの技術を詰め込もうと必死になり、ボクシングの枠にはまっていることに気がついた。それは本来の天心の格闘家としての姿や持ち味ではない。拓真戦で出せなかった適応力はその問題とつながっていたとも考えている。。
スパーリングでは一切手を出さないラウンドや、片手だけでやるラウンドなど「どんな状況になってもいい」ことを想定しながら進めている。
一方、父の教えについては「キックの時の動きや必殺パンチ。ボクサーにないもの、突拍子もないものを学びにいっている」という。
「気持ちだよ、気持ちが大事だよ」と口を酸っぱく声をかけられる。これも拓真戦ではなかった「倒しにいく」との闘争本能だ。
だが、エストラーダの経験は拓真の非ではない。元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との3度にわたる激闘はボクシング史に刻まれる名勝負でエストラーダの2勝1敗。元4階級制覇王者の井岡一翔(志成)がずっと対戦を熱望してきた王者としても知られる。
2024年6月にジェシー“バム”ロドリゲス(米国)とのWBC世界スーパーフライ級王者の防衛戦で7回KO負けを喫して王座から陥落したが、ダウンを奪っており7回までの採点はエストラーダがリードしていた。
オンラインでメキシコから会見に参加したエストラーダは「この試合は勝ちにいく試合。その先に井上拓真という王者がいる。そこに向かって突き進みたい」と静かに語り、さらに「試合数は少ないが素晴らしい選手と」とリスペクトをした上で具体的な勝利イメージを明かした。
「彼のスタイルの相手をじらしたり、アピールする部分の遊びに引き込まれないように気をつける。KOでも判定でもどんな勝ち方でも」
サウスポーで特異なスタイルの天心をかなり研究している。
ファイトマネーの問題で、ここ2年でたった2戦と試合枯れしている点、バンタム級のテストマッチは1試合でレベルの高い選手とやっていない点、そして35歳の年齢の衰えが天心にとってアドバンテージではあるが、うまくさばかれてしまう危険性はある相手だ。同じサウスポーのバムの勝利が参考になるはずだが天心は「理想はない」と否定した。
「向かい合わないとわからない。相手が思っていないことをどれだけやれるかがカギ。遠い距離、中間距離、至近距離でも、どんなことが起きてもいいようにやる。自分のスタイルで」
ボヤっとしたものではなく明確な戦略を固めていくことが必要となる。予想としては、4-6で不利だろう。それだけにこのエストラーダ戦を突破することには価値がある。
もし天心がエストラーダを撃破したとしても王者、拓真との再戦が決定したわけではない。
正式に発表はされていないが、井上拓真は5月2日の東京ドームの井上尚弥vs中谷潤人(M.T)のアンダーカードで大晦日にWBA世界バンタム級挑戦者決定戦に勝利した井岡とのビッグマッチが予定されている。拓真が勝つか井岡が勝つか、意見の分かれる勝負論のある好カードだ。
あくまでも一般論としてどっちが勝つかの見解を聞くと、天心は「どうなんだろう。どっちかが勝つ。右も左もない、どっちにいっても無」とジョークで交わして本音を明かさなかった。
だが、こう言った。
「願望は拓真選手に勝っていただかないと僕のストーリーがなくなる」
今拓真に伝えたいメッセージはないという。
「勝っても拓真、負けても拓真」
呪文のような問いかけもあった。
「絶対に勝てると確信している。何が何でも勝つ。蹴ってでも勝ちにいく」
”キラー”天心が両国で覚醒するのか。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

