「IOC元会長は謝罪せよ」ロシアのフィギュア“鉄の女”コーチが沈黙を破って反撃…ドーピング疑惑で「ミラノ五輪にいることが不快」と言われ「発言すべきではない」…トルソワ復帰にも言及
ミラノ・コルティナ五輪にコーチとして参加していたロシアの“鉄の女”の異名を持つエテリ・トゥトベリーゼ氏(51)が沈黙を破った。ロシアの動画配信サービス「Okko」でインタビューに答えたもの。4年前の北京五輪での当時のIOC会長の発言に謝罪を求め、今大会で世界アンチドーピング委員会のトップに「この場にいるのが不快」と発言されたことにも「私は彼の元恋人じゃない。発言すべきではない」と激怒した。ロシアのメダリストを量産したコーチになんら反省などない。
出産して復帰の21歳トルソワは唯一無二の存在
悪名高き“鉄の女”コーチが反撃した。
北京五輪女子シングル金メダリストのアンナ・シェルバコワ、銀メダリストのアレクサンドラ・トゥルソワ、2018年平昌五輪女子シングル金メダリストのアリーナ・ザギトワら多くのメダリストをスパルタで育成してきたトゥトベリーゼ氏だ。
今大会では指導している男子シングルのジョージアのニカ・エガゼのコーチとして姿を見せ、キス&クライで共に得点が出るのを待った。ただ女子シングルでは個人の中立選手として出場したアデリア・ペトロシアンを指導しているにもかかわらず姿を見せなかった。
これには世界アンチ・ドーピング機関(WADA)のウィトルド・バンカ委員長が会見で、トゥトベリーゼ氏の五輪参加について「個人的には彼女が五輪の現場にいることに不快感を覚える。しかし、彼女がドーピング問題に関与した証拠は見つかっていない。ミラノで活動することを阻止する根拠はない」とコメントしたことが関係しているとも見られる。
その発言にトゥトベリーゼ氏が嚙みついた。
「まるで私が彼の元恋人で彼に無断でどこかへ来て、彼が居心地悪くなったかのようでした。極めて個人的な発言です。あのような立場の人物が口にすべきではありません。もし私の存在が不快だったなら謝ります。でも私にとっては彼の存在は全く関係ありませんでした」
北京五輪ではトゥトベリーゼ氏が指導していた金メダル候補のカミラ・ワリエワに禁止薬物の陽性反応が出た。ワリエワは事実無根だと訴えて、女子シングル出場は認められたものの4位に終わり、五輪後に4年間の出場停止の処分が下った。スポーツ仲裁裁判所(CAS)の調査ではCASの調査では実に56種類の薬物を投与されていたというが、ロシア代表チームの主治医やトゥトベリーゼ氏は処分されなかった。当時16歳のワリエワが自分で禁止薬物を手にするわけがない。
またトゥトベリーゼ氏はその北京五輪での当時のIOC会長だったトーマス・バッハ氏の発言に対しての謝罪を求めた。
「彼は私がリンクを降りたワリエワを正しく迎えなかったと言いました。でも彼はそれについて意見を言う立場ではないはずです。私はいまだに公式な謝罪を待っています。彼が公に発言したのだから、公に謝る義務があります。あの場にあったのは演技の振り返りだけで、それは私の本来の仕事です」
ドーピング騒動の影響を受けて、ワリエワは4回転ジャンプで転倒するなどのミスを続けて4位に終わった。リンクを降りてきた失意のワリエワをトゥトベリーゼ氏は、慰めるどころが、冷たい態度で「なぜ戦うのをやめたの?」と叱責した。
それを受けて当時のIOC最高トップのバッハ氏は、「見ていて身震いするような非常に冷たい態度だった。慰めるのでもなく、助けようとするのでもなく冷え切った空気と距離感が感じた。本当にその選手の最善の利益を考えているのか」と批判したのだ。
トゥトベリーゼ氏は、4年が経過してもその当時のIOCの最高責任者の発言を許していない。
トゥトベリーゼ氏は今大会の女子シングルのフリーで一発逆転を狙って4回転トゥループをプログラムに組み入れるも転倒して6位に終わったペトロシアンについても触れた。
「落胆しています」としながらも「4回転トゥループを1本決めていれば、計算上は確実に3位でした。もしかしたら2位もあり得たでしょう。演技構成点も少し上がったはずです。2本決めてクリーンな演技なら優勝だったでしょう」と評価した
また「フリーで初めてステップにレベル4をもらいました。国内大会では一度ももらえなかった。国内ジャッジはより厳しく上体やエッジが不十分だと判断していたからです。今回は寛大でした」と、五輪のジャッジが、ロシアのウクライナへの軍事侵攻のため、国際大会から排除されているペトロシアンを差別していなかったことを評価した。
そして同コーチは、昨年8月の出産を経て、2030年のフランス・アルプス五輪へ向けて今年2月の国内大会から現役復帰している元教え子のトルソワについても言及した。
「サーシャ(トルソワ)の精神力には最大の敬意を払います。長期間練習を離れ、子どもを産み…まだ授乳もしている。それでも最難関ジャンプを跳びたいという意欲は本当に尊敬に値します」
トルソワは女子として初めて4回転トゥループ、4回転フリップ、4回転ルッツを公式戦で初めて成功させた4回転の申し子で、北京五輪のフリーでは、4回転を5本入れる超高難度のプログラムに挑んで銀メダルを獲得している。トゥトベリーゼ氏は、今大会では8位に終わった“4回転の神”イリア・マリニンにまだ21歳のソトコワを重ねた。
「特別な選手というのはいます。しかしイリアのような世代が次々に現れるわけでははありません。彼は唯一無二。そしてトルソワも同じく唯一無二の存在として受け止めるべきです」
ロシアの国際大会出場はウクライナとの和平が締結されるまで見通しが立たないが、ワリエワのドーピング問題に何の反省もしていない“鉄の女”コーチは、4年後のフランス・アルプス五輪でのフィギュア王国復活に向けて、何かをたくらんでいそうだ。

