伝説ドネアを“神の左”で沈めた増田陸が笑わなかった理由とは…挑戦を受ける可能性があるWBA王者の堤聖也が「まずいんじゃないか」と感じた43歳レジェンドの異変
WBA世界バンタム級挑戦者決定戦が15日、横浜BUNTAIで行われ同級4位n増田陸(28、帝拳)が元5階級制覇王者で同級1位のノニト・ドネア(43、フィリピン)を8回1分12秒にTKOで下して、同級のレギュラー王者、堤聖也(30、角海老宝石)への指名挑戦権を手にした。堤はプロ4戦目に判定負けした相手。実現すれば世界の舞台でのリベンジ戦となるが、堤は「俺は負けない。倒されない。やっつける」と返り討ちを誓った。ただ堤が鼻を痛めている影響で4月11日に予定されていた休養王者、アントニオ・バルガス(29、米国)との統一戦が延期となっていて、増田がいつ誰に挑めるかはまだ不透明だ。

レジェンドが井上尚弥戦以来となるダウンを喫した。
7回だ。ドネアの右をブロックした増田が、すぐさま右ジャブで左を隠してワンツーを打ち込むと、その左で元5階級制覇王者は天井を向いて倒れた。
「抜けるような手応えがあった。でも立ち上がってくるとは思っていた」
増田の予感通り、ドネアはすぐさま立ち上がり、膝をついてカウントギリギリまで休んだ。しかしドネアのコーナーはパニック、タオルを持ってエプロンに駆け上がった。
ゴングに救われるもこの時点で本来ならアウト。帝拳サイドの抗議もあり8回は、減点1がドネアに宣告されて始まったが、増田は「コーナーに上がってきたのは見えていた。でもまだ終わらないと準備していた」と冷静だった。
フィニッシュはワンツーの2連発。ドネアは倒れなかったが、戦意を喪失したところで、ドネア陣営がタオルを放り込んだ。
ドネアは陣営の判断に不服そうだったが、それ以上は生命の危機に陥る危険性もあった。的確な判断だろう。
伝説のドネアをギブアップさせたというのに増田は、笑いひとつ浮かべることがなかった。
試合後の会見でまずその理由を聞く。
「一度、ドネア選手を(7回に)倒してたんですが、もう少し綺麗な勝ち方をしたかった。自分の練習してきたものが半分出せたかなという反省もしながらちょっと考えていた」
勝利より反省ですか?と思わず聞き直した。
「ドネア選手もそう。ボクシングに対して自分がどう感じているかという部分で思うものがあった」
このストイックさが増田の凄みだ。
チャンピオンになる男の資格でもある。
ジムの大先輩である元WBC世界バンタム級王者、山中慎介氏から継承した“神の左”という“宝刀”をなかなか抜かなかった。
1ラウンドは互いに様子を見て、2ラウンドには右のジャブをフェイントを入れながら多彩に打ち込んだが、左ストレートは、3分間に1、2発程度しか使わない。3回、4回とドネアがどんどん前に出てペースを譲り渡した。4回までの採点は2人がドロー、1人はドネアが1ポイントリードしていた。
だが、それは増田陣営の戦略だった。
大和心トレーナーが明かす。
「冷静にプラン通りに進めてくれた。もっと早い段階から本人はもういっていいですか?といきたがったが、そこを抑えてドネアを疲れさせてからいきたかった」
昨年12月17日の堤との前戦で判定負けを喫したドネアは序盤に43歳とは思えない集中力を見せた。だが、中盤以降は“省エネ”ボクシングに変わりペースダウンしていた。狙いはそこにあった。
右を使って、左を温存しながらドネアにタイミングをつかませず、チャンスで、その宝刀を鞘から抜き斬る。ただその頃合いが難しい。
パンチでドネアの左目の上をカットさせた5回の終了時点で本田明彦会長からGOサインが出た。

