
「井上尚弥はやっぱりモンスターだった。ダウン克服は練習のたまもの」5.11井岡一翔と再戦するWBA王者マルティネスがモンスターを絶賛し「日本ボクシング界の勢い」を警戒
プロボクシングの元4階級制覇王者、井岡一翔(36、志成)との再戦(11日・大田区総合体育館)に向けてWBA世界スーパーフライ級王者のフェルナンド・マルティネス(33、アルゼンチン)が7日、東京目黒区の志成ジムで公開練習を行った。そのマルティネスを感動させたのがスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)の米ラスベガスでの戦い。「日本のボクシング界は勢いに乗っている」と井岡との再戦へ向けて気持ちを引き締めていた。
「体調は100%だ」
井岡との再戦を前にした王者マルティネスの関心を誘うほどモンスターの米ラスベガス決戦にはインパクトがあったのだろう。4日に来日していたマルティネスは日本時間の5日に行われた井上とWBA1位ラモン・カルデナス(米国)の4団体統一戦を配信で見た様子で、こんな感想を口にした。
「井上はオレのアイドルだ。やっぱりモンスターだった。一度倒れて立ち上がって彼の試合をした。戦争をした」
井上は2ラウンドにカルデナスのカウンターの左フックをもろに浴びてダウンを喫した。2024年5月6日のルイス・ネリ(メキシコ)戦以来、キャリア2度目のダウンだが、冷静に「大丈夫だ」とセコンドに合図を送り、カウント8まで回復を待ってから立ち上がり、3ラウンドから立ち直りを見せた。大橋秀行会長らは「判定勝利でいい」と声をあげたが、井上は倒しにいき、7ラウンドに右のショートストレートの4連打でダウンを奪い返し、8ラウンドに猛ラッシュをかけて、右のアッパーを叩き込むと、レフェリーが試合をストップした。
「彼の試合内容を見て、とても練習をしてきたんだと思った。それを祝福したい」
マルティネスは、モンスターがダウンの大ピンチを乗り越えられたのは、過酷なトレーニングの裏付けがあったと見ている。
井上の劇的な逆転TKO勝利に象徴された日本ボクシング界の勢いへの警戒心も生まれた。
「日本人は大変パワフルな選手が多い。日本でスパーをした時に彼らはパワフルでクレバーだった。日本人ボクサーの勢いは、多くの選手がファーストクラスにいることでわかると思う。チャンプがたくさんいることで勢いがある」
バンタム級の4団体のすべてのベルトを日本人が占拠するなど、現在の日本人世界王者は7人。史上初の4階級制覇を成し遂げた井岡は、その先陣を切って日本人ボクサーの最強時代の土台を作った一人でもある。マルティネスが再戦に向けて気持ちを引き締めるのも当然だろう。
この日は、アルゼンチンから来日したスタッフだけでなく、不明の“取り巻き”までがジムを訪れ、まるで我が家のような雰囲気を作って練習を公開した。
アップテンポのラテンミュージックを自らのスマホから大音量で流す中、大好きな地元アルゼンチンの強豪サッカークラブ「ボカジュニアーズ」のジャージに着替えた。「10」は“レジェンド”メッシの背番号。靴下まで背番号「10」のバージョンだった。ロープ、シャドー、サンドバッグ、ミット打ちと、1ラウンドずつ消化したが、ただし、その動きにキレがなかった。
マルティネスのスタッフは志成ジムに来るなり「空調を止めてくれ」と神経質に依頼し、マルティネスもずっとガムを噛んでいた。
「今回の体調はスペクタルで100%。ハードな練習をした結果が出ている。このチャンスをものにしたい」
そういうわりには、減量に苦労しているようにも映った。