
「大きな戦力ダウンだが新たなジャイアンツが見えてくるかも」巨人の岡本和真が離脱する暗いムードを変えて阪神を撃破した坂本勇人の“風格”とOB松井秀喜氏の“檄”
巨人が7日、東京ドームで阪神を6-4で振り切って連敗をストップ、今季初めて本拠地での阪神戦勝利を飾り、首位タイに浮上した。前日に4番の岡本和真(28)が「左肘靭帯損傷」で全治3か月の大怪我をして戦線離脱。阿部慎之助監督(46)は坂本勇人(36)と浅野翔吾(20)を緊急昇格させたが、その坂本が4回に決勝のタイムリー二塁打を放ち窮地を救った。また試合前にはOBの松井秀喜氏(50)がミーティングに特別参加して「いいチームは何人かが欠けても力を発揮できる」と檄を飛ばし、日々の準備の大切さを説き、一丸ムードを高めた。
坂本が4回に決勝のタイムリー二塁打
絶対的な4番の名前がラインナップから消えた。前日の一塁守備で、中野と交錯した際に左肘を痛めて苦悶の表情でベンチに下がった岡本。「左肘靭帯損傷」で全治3か月の診断を下されて戦列を離れた。チームを襲った大ショック。阿部監督は、坂本と浅野の2人を緊急昇格させた。一時期、3軍に落ちていた浅野は、この日、ファームの横浜DeNA戦で本塁打を放っており、その映像を見た阿部監督が「呼ぼうと決めた」という。
そして3番に若林を初抜擢し、92代の4番には吉川を起用した。
阿部監督は「4番だから長打を打って欲しいとかはない。今一番いいバッターなんで」とその狙いを明かしている。吉川は打率3割をキープしていた。
1回、先頭の泉口がセンター前ヒットで出塁すると、場内が騒然となった。2番キャベッジがなんとセーフティ気味に送りバント。来日初犠打で二塁へ走者を進めたのだ。
現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人は、「今季の阿部監督は5回までは動かない。おそらくサインではなくキャベッジが自分でやったのでは?」と推測する。ベンチで阿部監督は拍手していたが、おそらくサインではなかったのだろう。だがそのキャベッジのメッセージは続く若林に伝わった。
カウント2-1からの4球目。フォークのスッポ抜けを強引にレフトスタンドへ持っていったのだ。先制2ラン。開幕からの連続無失点の日本記録に挑む山崎への大きな援護点となった。だが、岡本不在のショックが肝心の守りに影響を与えた。
2回だ。一死一、二塁で、小幡の一、二塁間に飛んだ難しいゴロをさばき、二塁へジャンピングスローした吉川の送球が大きくそれて二塁走者の生還を許してしまう。山崎の開幕からの連続無失点記録は36でストップ。1939年に阪急の高橋敏が作った38回3分の1の日本記録更新を目前で取り逃がすことになった。
山崎は口元をゆがめて不服そうな表情を浮かべた。
さらに3回には無死一塁から森下の左中間への打球をヘルナンデスがグラブに当てて後ろへそらして一塁走者が一気に同点ホームへ。重なる守乱でゲームは振り出しに戻った。今季対阪神に1勝7敗。しかもドームでは1勝もしていない。嫌なムードが巨人ベンチを包む。
その流れを断ち切ったのが1軍に緊急昇格し「7番・三塁」でスタメン出場した最年長の坂本だった。
4回だ。簡単に門別に二死を取られてからヘルナンデスがレフト前ヒットで出塁すると、坂本は追い込まれてから、高めの釣り球に手を出さず、フルカウントまで粘る。最後は門別が膝元に曲げてきたスライダー。技でバットに乗せて“弱い”打球をレフト線へと運んだ。勝ち越しのタイムリー二塁打だ。
「内容としては、あまり綺麗なヒットでもないですし、まだまだかなと思うんですけど、僕らしいレフト線のツーベースだった」
開幕から11試合で打率.129と低迷し、自らが阿部監督に2軍調整を直訴する形で4月15日に登録抹消されていた。
「昨日家で試合も見ていたんですけど、和真が怪我をして本当に巨人軍の4番で一人で凄い背負いながら戦っている姿を見てましたので。和真の代わりにはなれないですけど、何とかチーム全員でカバーしながら帰ってくるまで頑張ります」
チームの大ピンチにかけるベテランの責任感があった。