
「その判定はクレイジーだ」4年ぶり復帰の46歳パッキャオのドロー判定が物議…井上尚弥の元ライバルも物言い…現役続行を宣言し次戦候補に再戦と共にデービスやメイウェザーの名が
プロボクシングのWBC世界ウエルター級タイトルマッチが19日(日本時間20日)、米ラスベガスのMGMグラウドで行われ、4年ぶりに復帰した元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(46、フィリピン)が王者のマリオ・バリオス(30、米国)に挑み、試合は共に決め手に欠けるまま判定にもつれこみ、ジャッジの2人が114-114と付けるドロー。歴史的な王座返り咲きとはならなかった。その判定を巡って「パッキャオが勝っていた」の声が現役の世界王者から寄せられるなど物議を醸した。パッキャオは現役続行を宣言。バリオスは再戦を求めた。
「4年前よりアグレッシブでいい試合ができた」
フィリピンの大統領戦に敗れ、4年ぶりにリング復帰した46歳のレジェンドが16歳年下の王者を相手に最終ラウンドまで激戦を演じるとは誰が想像できただろうか。しかも、観客席にいたIBF、WBC元世界同級王者のシェーン・ポーターが「ここはめっちゃ盛り上がってるよ。最高のエネルギーでかなりいい試合だ。みんな“スプリット・デシジョン”って聞くことになるのかな?」とXに書き込むなど「マニーコール」を繰り返した約1万3000人のファンの多くが、パッキャオの勝利を信じて疑わなかった。
スーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(大橋)のリングアナとして日本でも有名になったジミー・レノン・ジュニアがジャッジペーパーを読みあげる。1人が115―113でバリオス。そして残り2人が114-114でドロー。惜しくも、バーナード・ホプキンス(米国)の49歳3か月に次ぎ、ジョージ・フォアマン(米国)の45歳を超える46歳7か月での歴史的な王座返り咲きはならなかった。
爽やかな表情で王座を防衛したバリオスより先にリング上でインタビューを受けたパッキャオは、「勝ったと思った。接戦だった。バリオスは素晴らしいファイターだった」と素直な気持ちをぶちまけた。
1ラウンドから46歳とは思えぬアブレッシブな動きで、右ジャブを突き、左ストレートを交えながら、バリオスのパンチに反応し、左右に小刻みなステップを踏みリズムをつかんだ。3ラウンドにバリオスのボディ攻撃に「ローブローだ」と何度かクレームをつけたが、そのテンポは止まらない。
ジャブのダブルステップや、左ストレートから歩くようにして連打するパッキャオらしさは健在。ただ米専門メディアの「ボクシングシーン」が「昔の力強いパンチや、最後まで彼を動かす飽くなきエンジンはなかった」と表現したように最大の武器である破壊力には欠けていた。
しかし、なぜかジャブのスピードとリーチでパッキャオを遥かに上回り、ボディブローも効果的だったバリオスは、ディフェンスに時間を割き、手数が少なく勝負を仕掛けなかった。レジェンドへの過大評価と、その実績への畏怖が、バリオスを怖気づかせたのか。
あれよあれよ、とラウンドが進み、あとからジャッジペーパーを精査すると、9ラウンドまで三者共にパッキャオを支持していた。
だが、10ラウンドの終わりにバリオスのセコンドがハッパをかけた。
「もっとだ。遠慮せずボディを打て。パキャオにリスペクトは必要はない」
レジェントに敬意を払いすぎて思い切ってパンチを打ち込んでいないように見えたのだろう。
バリオスは前に出て、手数とヒット数で圧倒し始めたが、決定打は奪えない。結果的に、この10、11、12ラウンドをバリオスが支配して3人のジャッジが全員彼を支持したことで1人が逆転、2人がドローの判定となったのである。